国際会計基準の紆余曲折:金融商品の評価が変わる

2009.10.05

経営・マネジメント

国際会計基準の紆余曲折:金融商品の評価が変わる

野口 由美子

国際会計基準の金融商品会計は大きく改訂されようとしています。今回は企業が保有する株式等、金融商品の評価方法に関する動向をお伝えします。

本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。

国際会計基準の基準書はたくさんありますが、
その中で複雑で難解過ぎると悪評高いのがIAS39号「金融商品:認識及び測定」です。

IAS39号は1998年に公表されましたが、
前身となるIAS25号ができてから12年の歳月をかけて作られています。
この間にいろいろな例外処理や選択肢が作られ裁量の余地を残したり、
一方でそれらの規定が利益操作に利用されないよう要件を決め
禁止事項を定めて厳格な処理を求めたり、と
項目がどんどん増えて今の複雑な基準書ができたわけです。

それに比べると今回の全面改訂はかなり急ピッチで進められています。
改訂の論点は現在以下の3つにしぼられています。

(1)金融商品の分類と測定
(2)金融商品の減損
(3)ヘッジ会計

今回は金融商品の分類と測定について、
最近の審議状況を見てみたいと思います。

現在の金融商品会計では金融商品を保有目的等から分類を行ない、
それによって評価方法が異なります。

売買して売却益を得るために持っている有価証券等の金融資産は、
売買目的保有資産に分類します。
企業は値上がり益を獲得することが目的なので時価の変動が
企業の業績に反映されるべきと考えられます。
したがって、毎期金融資産を時価評価して評価損益を計上します。

一方、企業が保有する有価証券等の中には
必ずしも売買することを目的に持っているとは言えないものもあります。
日本企業が多数保有している持ち合い株式等は
これに該当すると考えられます。
このような金融資産は売却可能保有資産に分類します。
これらの金融資産は時価の変動によるリスクにさらされているので、時価で評価します。
しかし、そもそも売ることを目的にしていないので、
時価評価による評価損益を計上しません。

その他に、債券等は満期まで持って利息を受け取ろうという意図で
保有することもあります。
これは満期保有投資に分類します。
満期まで持っているので時価の変動は関係ありません。
償却原価といって利息を除いた部分を金融資産として計上し、利息を利益として計上していきます。

このように、企業の意図によって会計処理が変わってしまいます。
企業が自ら保有目的を変えたと言って、
都合良く会計処理を変えてしまうことを認めるわけにはいきません。
そこで国際会計基準では分類に要件をつけて
安易に分類を変更することを禁止しています。

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