日経新聞10月16日の16面に2つの記事が並んでいる。「百貨店6社が最終赤字」「百貨店アパレル4社2社減益、2社赤字」。百貨店の苦境は繰り返し報道されているが、その百貨店を主要な販路とする大手アパレル4社もレナウンとサンエー・インターナショナルは赤字。残る2社のオンワードと東京スタイルも9割減益という惨憺たる決算である。
■変わるアパレル市場
百貨店と高級衣料は長く蜜月の関係が続いたが、百貨店は共倒れを避けるため各社ともユニクロを店内に引き入れている。9日には高島屋が2010年春に新宿店にユニクロを導入すると発表し、その規模は都心部のユニクロとしては最大規模になるという。前掲の記事中では「低価格衣料のシェアが高まっている」としているが、もはやその勢いが留まることはないだろう。昔日のように誰もが高級衣料にあこがれることはなく、むしろそれはニッチな市場としてのみ存続するに違いない。
■市場を創造したファストファッション
では、今日のアパレル市場におけるメインストリームはどこかといえば、記事では「低価格衣料」という言葉が使われているが、昨今ではすっかりその言葉も定着した「ファストファッション」だろう。ファストファッションはなぜ、今日隆盛を誇っているのか。世界的な景気の低迷によって高級衣料から低価格なファストファッションへの顧客層が流れたという見方もあるが、それ以上に大きな要因がある。それは、ファストファッションは従来ファッションへの関心が高くなかった層に対しても、お金をかけずにトレンドファッションが手に入るという魅力を提供し、顧客層の裾野を広げ、自ら市場を創造したのである。
■ファストファッション業界は戦争をしているのか?
そのファストファッションの御三家といえば、スウェーデンのH&M、スペインのZARA、イギリスのTOPSHOPであるといわれている。昨年のH&Mの日本初上陸での大行列も記憶に新しいが、2009年はさらに新勢力の上陸も相次いだ。
その中心地として、ファッションの街といわれる原宿であり、そこではファストファッションの大激戦が繰り広げられているとメディアは繰り返し報じている。しかし、実際には意外と顧客層が異なり、棲み分けができているのではないかと筆者は思っている。
■我が道を行くZARA?
原宿のファストファッションブランドは多くは明治通りに並んでいる。唯一ZARAは、明治通り沿いではなく、少し明治神宮寄りの表参道沿いにある。物理的に距離を置いているだけでなく、ファストファッションの中でもZARAが最も特異な存在なのではないだろうか。ZARAは流行と同期しない独自のファッションづくりをしているといわれ、常に他品初少量生産した商品を高回転で店頭に並べていく。日本国内での店舗展開も最も早く、11月には渋谷に50店目を開業するという。価格的にも少し高めであるため、例えば筆者が教鞭を執っている青山学院大学などで、若年層から好きなブランド名を聞いても、その名が挙がることはまれだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。