トレンド調査:「とろける」食感大流行のナゾにせまる?!

2009.10.19

営業・マーケティング

トレンド調査:「とろける」食感大流行のナゾにせまる?!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 なにやら最近とろけている。  いや、筆者がとろけるような、あま~い生活を送っているのではない。食べ物の話だ。「とろける○○」という食品を昨今、随分目にしないだろうか。

 東京ウォーカーが一つのヒット商品を紹介していた。
 <冷夏でもバカ売れ!アイス「パルム」その人気の理由とは?>
http://news.walkerplus.com/2009/1016/5/
 人気の秘密は<なめらかな口どけのチョコレートとリッチなミルク感>であるといい、プレミアムアイスクリームと同様のクリーム・脱脂濃縮乳を使い、急速冷凍することで氷の結晶の細かい、なめらかなアイス>を実現し、アイスクリームを包むチョコレートは<体温と同じ温度で溶けるようにコントロールされており、口に入れた時になめらかに溶ける仕組み>に仕上げたという。パッケージにも「なめらかな口どけ、上質の証」と明記されている。

 「なめらかな口どけ」という表現よりももっと直截な「とろける○○」という食品を昨今、随分目にしないだろうか。しばらく前は、アサヒ飲料のバヤリース「とろけるマンゴー」や「とろけるモモ」ぐらいだったように思う。
 その後アサヒ飲料は「バナナ」や「フルーツミックス」の「とろける」を発売し、ちょっととろけそうにない「レモン」まで、片っ端からとろかした。

 しかし、世間ではそれを上回る勢いで「とろける現象」が進行していたようだ。Googleで「とろける 食品」というキーワードで検索すれば出るわ出るわ。そのまま商品名にもなっているSB食品の「とろけるカレー(ハヤシ、シチュー)」を筆頭に、レアチーズケーキ、杏仁豆腐、湯葉豆腐、カニクリーミーコロッケなどなど・・・。ふと気になって我が家の冷蔵庫を見てみれば、しっかりSB食品の「とろけるカレー」のルーが入っていた。気付かぬうちにも「とろける」は忍び寄っていたのである。

 そもそも、この「とろける」は食感を表わす言葉である。食感は<味や匂いなど化学的刺激であるフレーバーに対し、堅さや粘性・付着性はテクスチャとも呼ばれる(Wikipedia)>だという。味覚は現在では<生理学的には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味に位置づけられる(同)>が、言葉としては食感を表わす言葉は日本語において極めて多様であることが知られている。

 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所 早川文代氏の2006年の論文「テクスチャー(食感)を表わす多彩な日本語」が興味深い。
http://www.mame.or.jp/library/pdf_z/052/MJ052-08-TK.pdf
 2003年の調査では、日本語のテクスチャーを表わす語彙は455語が収集できたという。中国語の3倍、フランス語は226語、フィンランドは71語だというから、その多様性は驚くものがある。
 同論文でさらに興味深い点を列記すると、日本語は擬音・擬態語が多いという特徴があるものの、70%が擬音・擬態語であったこと。さらにその中でも「粘り」の表現が多いこと。特に、”にちゃにちゃ””ねばねば””ねっとり”など、「に」「ね」ではじまる粘りの表現と、”ぷりぷり””ぷるぷる”と「ぷ」ではじまる弾性の表現が多いことなどである。
 もう一つ見逃せないのが、テクスチャーには時代での変化と年代による違いがあるという論述である。1964年の調査との比較で、”もちもち””ぷるぷる””ジューシー”な今回現れた新しい用語であるという。特に”ぷるぷる”が様々なゲル状のデザートが登場したこととの関係を指摘している。また、”ぷにぷに””シュワシュワ”などは低年齢層の認知度が高いという。グミや炭酸飲料などの食用・飲用経験が背景にあるとの指摘だ。また、”口どけがよい””もっちり”も低年齢層の認知が高いが、これは商品名や広告宣伝の影響を指摘しているという。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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