吉野家ホールディングスの中核事業である牛丼の吉野家が、今後中国市場を成長の基盤とするようだ。
<吉野家が中国1千店の野望 13億人の“胃袋”争奪戦>
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091024/biz0910241800005-n1.htm
MSN産経ニュースが報じるところでは<同社は、平成3年に香港に1号店をオープンし、9月末までに沿岸部を中心に218店を出店。21年2月期の販売額は約170億円に達した。さらに「2010年代半ばまでに1千店」の計画を掲げ、店舗網の拡大を急ぐ>という。
吉野家の日本国内の店舗数は今年9月末の時点で1,077店。少子高齢化が進む国内で座して死を待つことはできず、巨大マーケットである中国市場を目指す企業は少なくない。
主だったところでは、<牛めしの松屋フーズは9月末に上海に1号店をオープン。今後3年かけて上海で10店の展開を目指す><上海を中心に41店を展開するイタリアンレストランのサイゼリヤは、来年8月までに新たに40~50店を新規出店する計画>だという。しかし、吉野家の進出ピッチは突出して急速である。
その背景には止むにやまれぬ国内事象がある。<「さまざまな販売施策を講じても、売り上げを押し上げる効果はない」>3億円の最終損益見込みを発表した<8日の21年8月中間決算発表で、安部社長はため息を漏らした>という。
成長戦略のオプションを考える「アンゾフのマトリックス」で同社の展開を分析してみよう。縦軸に既存市場で勝負するのか、新市場に展開するのかという市場の軸をとり、横軸に既存製品で勝負するのか、新製品を開発するのかという製品の軸をとる。
次にその掛け合わせでマトリックスを作る。
既存市場を既存の製品で深掘りする「市場深耕」、既存市場に新製品を投入する「新製品開発」、新市場に既存製品を展開する「新市場開拓」、新製品を新市場に展開する「多角化」の4象限である。但し、新たな商品で新たな市場を狙う「多角化」は、何か自社内にシナジーを発揮できる要素がない限りリスクが大きすぎるため避けるべき選択肢だといえる。
「市場深耕」を実現するためには、既存顧客の購入頻度を増やすことや、購買量を増やすことを実現する必要がある。中核事業の吉野家においては、業界内の価格競争に劣後し、さらに「牛丼一本」にこだわった結果メニュー開発が遅れたという経緯もある。さらに、使用する牛肉が米国産であることから、狂牛病騒動以来、敬遠する顧客も少なくない。頼みの綱は、現在展開をしている「3倍食べれば1杯無料」といったキャンペーンでの顧客のつなぎ止めだろうか。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。