日本が目指す国際会計基準へのソフトランディング

2009.11.02

経営・マネジメント

日本が目指す国際会計基準へのソフトランディング

野口 由美子

日本の会計基準を国際会計基準に近づけるコンバージェンスプロジェクトが進行していますが、ここには注意しなければならない問題が潜んでいます。

本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。

国際会計基準が日本でも適用される見通しになったということで、
国際会計基準の勉強を始められたり
実際の適用に向けた準備に着手されたり
いろいろな対応を検討されている方が多くなりました。

実際に国際会計基準が日本企業に適用されることとなれば
周到な準備をしていかないとかなりの混乱が起きそうです。

この混乱を避けるという意味でも重要なのが
現在もすでに進行している
会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)の
コンバージェンスプロジェクトです。

ASBJでは国際会計基準と差異がある日本の会計基準を改訂し、
今までなかったものについては新しい会計基準を開発し、
国際会計基準との差異の解消に努めています。

そして今後さらに
コンバージェンスプロジェクトは加速して進められることが
想定されています。

コンバージェンスプロジェクトの流れにのって
日本の企業が新しい会計基準を適用していけば、
国際会計基準を適用する段階には
ほとんどの差異がなくなっているためスムーズに移行できる、
ソフトランディング、
というのが理想だと思います。

しかし、ここで注意しなくてはならないのが、
コンバージェンスで入ってきている日本の会計基準は
国際会計基準の日本語訳ではないということです。

新しい会計基準を適用するときに
会計処理の選択の仕方によって
国際会計基準では認められていない会計処理を適用することも
できてしまいます。

例えば、
リース取引の会計基準はコンバージェンスプロジェクトの一環で改訂されましたが、
少額や短期の重要性の低いリース取引や
改訂前からある所有権移転外ファイナンス・リース取引を
賃貸借処理することが認められています。
このような処理は国際会計基準にはありません。

日本基準の改訂で一度処理を変えて、
国際会計基準の適用でまた変更が必要になる
ということにもなりかねません。
日本の会計基準の改訂に対応する段階から
国際会計基準の知識は必須になるでしょう。

また、リースの例で言えば、
国際会計基準でリース取引についての基準書が改訂されることになっていて、
現状とは全く違った処理が採用される可能性もあります。
そうなればまた日本の基準は改訂されるかもしれません。

国際会計基準の改訂が進めば進むほど、
日本のコンバージェンスプロジェクトもそれを
追いかけなくてはならなくなります。
つまり、コンバージェンスがどのタイミングでどれだけ進展するか、
ということは日本の状況だけで決まるものではないので
国際会計基準の適用までにコンバージェンスの対応が
どれくらい進むかというのもよく分からないのが実情だと思います。

日本のソフトランディングもそんなに簡単なことではなさそうです。

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