日本マクドナルドがカフェ市場の完全制圧に乗り出した。ファストフードの強大なるコスト・リーダーの本格進出は、この後のさらなる大胆な展開も予感させる。
<スタバに対抗?マックが「カフェモカ」などコーヒーメニューを強化!>(東京ウォーカー)
http://news.walkerplus.com/2009/1103/10/
上記リンクだけでなく、各メディアでマクドナルドのカフェメニュー強化は大きく取り上げられている。今回は、カフェラテ、キャラメルラテ、カフェモカ、カプチーノなどの、より「カフェらしい」メニューを投入しただけでなく、「マックカフェ」という新ブランドとして販売していることが大きな特徴である。
このブランドネームが日本マクドナルドとしての壮絶なリターンマッチへの決意を表わしている。「マックカフェ」は元々は単なる商品ブランド名ではない。マクドナルドの新業態・カフェ店舗として1998年にスタートした店舗ブランド名である。その1度目のチャレンジは店舗を矢継ぎ早に展開したものの、翌年撤退。2度目のチャレンジは2007年に同名の店舗を複数展開したが、翌年から縮小を相次ぎ、現在、同社のWebサイトにはその形跡を示すものすら残されていない。
新業態店ではなく、既存店舗でのカフェメニュー拡充という方向性に舵を切ったのが、昨年7月のこと。既にその前に顧客から評判の悪かったコーヒーを、ホット、アイスともに「プレミアムコーヒー」化して100円(現在は120円)で提供するという大手術を終えている。それに続いて、焼きたてベーカリーメニューを投入した。そのメニューは新業態店の「マックカフェ」のメニューと完全にかぶる。つまり、その時点で新業態店の展開は収束させる意志決定がなされていたと理解できるのである。
3度目の挑戦は、新業態店ではなく、本体メニューへ全面的にカフェメニューを組み込んでの「カフェ市場完全制圧」を狙った展開である。そして、それは、もはや失敗が許されない最後のリターンマッチなのだ。
その意気込みは原田CEOのコメントからも伺える。<「やるからにはトップを目指す。価格は他社とも比べて一番お得であり、マクドナルドの店舗数の多さ、24時間営業などの利点を考えると(カフェ市場で)一番をとれない理由はない」>(東京ウォーカー)という。
取り扱い店舗も<年内には都内260店舗前後、2010年内には全国1000店舗の展開を目指す>(同)というから、完全制圧に向けたチャネルの面展開も急ピッチで進む。新業態店をチマチマ出店していた状況とは意気込みが違うのである。
1,000店という規模はチェーン展開カフェ市場の約2割に上る店舗が市場に突如出現したのと同じだ。他の例で考えるなら、セブンアンドワイがコンビニ店舗にATMを設置してATM市場を制圧したのと同じだ。流通網やチャネルを活用した「経営シナジー」を発揮した展開である。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。