飲食店M&Aの実例

2009.11.11

経営・マネジメント

飲食店M&Aの実例

清水 美帆
株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

セミナーなどで、飲食店の成約事例について聞きたいという声が多いので、機密保持に問題ない範囲で書きます。

先日成約した案件ですが、譲渡対象事業は郊外にある25坪程度の小さな和風居酒屋1店舗でした。売り手社長は勉強家でかなりのやり手の2代目女社長。経営が傾いていた事業を先代より譲り受け、収益性のある事業に再生させて順調に経営されていたのですが、この度はご本人のご結婚で地方への引っ越しが決まった為のご売却でした。

売り手社長からのアプローチは、私のブログ弊社HPを見て頂いていた様で、まずは無料の事業査定をしてみたいというご依頼でした。

売上高6,000万、社長の役員報酬800万、決算上の営業利益150万、税金対策などを考慮した実質の営業利益1,000万と財務内容も好調です。事業譲渡の場合のバリュエーション(売買価格査定)は、原則、有形固定資産の簿価残+営業利益の3年分で計算するのですが、査定での売買価格は3,500万円でした。査定後すぐに、オーナー様からは売却をお願いしたいというご依頼を頂き、動きだしました。もちろんこの時点では、従業員さんには内緒で動きます。経営意向がしっかりと決まるまでは不安を与えてしまったり、変な噂がたち退職してしまうというリスクもあるからです。契約が終わり、お金がちゃんと振り込まれるまで、M&Aは最後の最期までどうなるかわかりません。

まずは、弊社にご登録頂いている上場企業様、飲食店経営で有名な企業様を中心にご紹介させて頂いたのですが、財務内容も素晴らしくて非常に良い案件なのだが、ターゲットとしている出店エリアではない為、すぐに買収は難しいとのお返事が多く、もし他で決まらない様なら再度検討するので、とりあえずはペンディングでまた様子を教えて欲しいという声も頂きました。

お見送りの理由などをお伝えした所、それでは、売却価格を1,000万円下げて、2,500万円で探してほしいという事でした。更には日本酒などの在庫なども全て込みで良いとの事。条件変更をこれまでご紹介していた先にしたり、HPの記載等も変えて再度募集し始めました。

ちょうどその頃、買い手社長となるM氏よりHPからお問い合わせを頂きました。私は毎日平均しておよそ4社様と打ち合わせをさせていただいていますが、買い希望の企業様とも必ず一度はFace to Faceでの面談をし、会社概要を説明して頂いていています。またその際に必ず、社長のひととなり、会社の状況を確認する事を重要視しています。

その時も同様に、買い手社長様には弊社にご来社頂き、ご面談を通して、ひと通りの買収希望内容を伺いました。コンサルティング会社を経営されているのですが、現金商売もポートフォリオの一つとして持っておきたいので、飲食業を買収したいとのご意向でした。私は、これまでの経験から飲食業の厳しさを知っているので、「飲食は始めてでは利益を出し続けるのは難しいので、教育事業はいかがですか?」とお勧めしました。しかしながら、買い手社長は、「以前飲食をゼロからやって失敗した事があるので、今回は既存の収益力のある飲食店を買収して、ノウハウを吸収したい。」というお考えでした。であればと、やり手の女性社長が経営されている郊外の和風居酒屋をご紹介した所、すぐに視察に行って頂き、「進めたい」とのご連絡を頂きました。細かい事までじっくりしっかりと判断される方ですが、重要な要所での決断は非常に早い方でした。

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清水 美帆

清水 美帆

株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)

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