現場から上がった企画書。 起案者の「『意志』がない」と憤慨なさった経験はありますか? もちろん起案者の意思も提案が頓挫しないために必要な要素です。 しかしそれを「現場」に求めていいのでしょうか? 次世代のリーダーを育てるセオリーをご紹介します。
「ふぅ~」
浅田社長(仮名)が、ため息をつきながらドカッとソファに座りました。
人を育てるのは難しいですね…。
独り言のようにつぶやきながら、丸めた書類の束を私に差し出します。
「オグラさん、見てくださいよ」
書類の束は、どうやら社員から経営へ対する提案書のようです。
促されるままに開いてみると、以下のように書いてありました。
「新商品のロゴマークを広告代理店に発注した結果、
以下の3案があがってきました。~中略~社内でアンケートを取ったところ、
A案が第一位、C案が第二位、B案が第三位という結果でした。
上記をもとに、幹部会にてご決定下さいますようお願いします」
パッと見たところ、きちんと手順を踏んだ提案書のように見えます。
しかし、何か物足りない…。そう感じた私がもう一度読み直そうと、
ページを戻したところで、浅田社長がズバリと解説してくれたのです。
「後は幹部会で決定してください、か…。気楽なもんだな。『意思』がない」
ははぁ、なるほど。大まかに察しはついたものの、あえて私は質問をすることにしました。
「『意思』がない、とはどういうことでしょうか?」
社長が答えます。
「だってそうでしょう。この提案書には何一つ起案者の『意思』が書かれていない。
『おれはA案にしたい、すべきだ』という思いはどこにもなく、
ただ投票結果が1位だからA案、とだけしか書かれていない。
こんなものは提案じゃない。ただの放り投げだ」
まさにその通り。私が感じた違和感と同じ考えを社長が解説してくれたのです。
しかし、これだけで社長の怒りは収まりません。
「しかも責任者からのプレゼンもない。電子メールで書類を送ったきりで、
その後はほったらかし。いつまでに決めるつもりなのか?
誰がこの話を決定レベルまで進めるつもりなのか?無責任にもほどがある」
まあまあ…。冗談めかしながら私は社長を取りなしました。
そしてこう質問したのです。社長は今後どうしたらいいと思いますか、と。
「これから?うーん…」
急に黙り込む社長。10秒、20秒…。決断したようにうなずくと、社長がこう言いました。
「そうか。起案者の課長に伝え、本来のやり方をやらせるしかない」
その通り。私は大きくうなずきながら、しかし、一言だけ付け加えました。
「ただし課長ではなく、部長へ求めましょう」
自らの意思で案件を前へ進め、経営トップから承認を取り、意思を通す…。例えば、
「オレは絶対にこうすべきだと思う。社長が何と言おうと会社にとってベストはこれです」
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