永谷園の「生姜部」。まさに今、ビジネスとしては「収穫期」を迎えているのだろう。新製品の投入も矢継早である。そんな同社・同部に作って欲しい商品を考えてみた。
生姜部の最新商品は「『冷え知らず』さんの生姜ぞうすい」。この冬限定・コンビニのみで販売だという。寒さが厳しくなる季節に何ともにくい商品である。
永谷園の生姜部とは、生姜という素材を究めるために設立された組織だ。主力商品は「しょうがの知恵」シリーズ。シリーズ名より「『冷え知らず』さんの・・・」という商品名の方が圧倒的に認知度が高い。展開商品はカップスープを主軸に、即席スープ、ボトル缶飲料、グミ・飴・キャラメルといった菓子にまで展開を始めた。
「『冷え知らず』さんの・・・」のコンセプトは<2007年6月に、オフィスで働く女性をターゲットに開発した生姜入り商品シリーズ>であり、<生姜を主役にした商品で、女性の美容と健康を応援していく>という。(同社ニュースリリース)。
こんな声を聞いた。「何だか、体温が上がらないんですよ。生命活動が低下してきているっていうか・・・」(ベンチャー企業役員・男性・34歳)
そんな彼が飲んでいたのは、「『冷え知らず』さんの生姜チャイ」。
「正直、買うのに抵抗がありましたよ。でもね、背に腹は替えられませんから。それにね、確かに飲むと暖まるんですよ、これ。」
手にした缶には、ちょっとオシャレなタッチで描かれた、「冷え知らずさん」とおぼしき女性のキャラクターが描かれている。キャッチコピーは「冷えは、オンナの大敵!」。描かれている手書き風の文字も何やらカワイイ。イケメン、男前の彼が購入を躊躇するのもわかる。
「オトコの冷え性」。意外と多いのである。日経BPネットの4年ほど前の記事にリンクを張ろう。
<実は男性にも多い「冷え性」( http://tinyurl.com/ycs886j )>
<以前に比べて、最近は男性の冷え性が目立つようになってきたようだ。「男が冷え性だなんてかっこ悪いと、多少の冷えなら辛くても黙って我慢していた人が多かったが、この風潮が崩れてきたためではないか」>と医師のコメントから記事は始まる。
辛い世の中だ。寒さまでぐっと堪えてのみ込んでいるなんてとても無理なのだ。ましてやエコなのか経費削減なのか、オフィスの暖房の設定温度は低い。寒々しいのはボーナスが減って寂しい懐のせいだけじゃない。
というわけで、是非とも「冷えしらず君」を作って欲しいのだ。スープや菓子はともかく、飲料は是非作って欲しいと、実は隠れ冷え性の筆者も切望する。
しかし、問題はそんなに簡単ではない。
「冷えしらずさん」に対して、それと混然一体となるような「冷えしらず君」を作ってしまうと、「ええぇ~課長が同じの飲んでる~」「部長もだ~」と、オジサンたちの進出に、既存顧客である「オフィスで働く女性」がNO!を示すかもしれない。安易なブランド拡張は、既存顧客の離反を招く。ターゲットである「冷え性男」にも、最低限の矜持はある。「冷えは、オトコの大敵!」では事実はそうでも、少々情けない。手が出しにくい。故に、ポジショニングと、それを示す商品名、キャッチコピーには腐心することになる。
(筆者はコピーの才能がないので例示は控えます。ご用命いただければ、弊社コピーライターが担当します)。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。