戸建て住宅市場が、これからの成長をかけて大きく変わろうとしている。環境戦略にフォーカスする大手に対し、ビルダーとしての地位を狙う工務店ネットワーク。住宅業界はどこへ進むのか。
国土交通省から発表された10月度の新設住宅着工数は、前年対比27.1%減の6万7,120戸、通年で42年ぶりの100万戸を割るのは確実だという。マンションの落ち込みが大きいために、ショッキングな数字になっているが、持ち家に関しては4.9%減にとどまっており、日本人の持ち家志向は健在のようだ。
この一見堅調な戸建て住宅市場が、これからの生き残り、成長をかけて大きく変わろうとしている。
これまで、住宅はある意味日本の豊かさの象徴とされ、国策による保護に守られてきた。高度成長時代に核家族化、都市への集中が進む中、ローコストで提供された工業化住宅は、「うさぎ小屋」と揶揄されながらも、日本の住宅事情の改善に、大手ハウスメーカーは、大きく寄与した。そして国からの資金提供、出版を中心とした大手中心の情報提供(広告)に後押しされながら、郊外の一等地に膨大な敷地を使った住宅展示場でのイメージ訴求は、地域に根ざした工務店の存在が忘れられるほどの存在感で迫ってきた。結果、大手メーカーが提供する工業化住宅は短期間である程度のシェアを持つことに成功する。
大手ハウスメーカーが現在にいたるまで順調にシェアを伸ばし続けてきた理由のひとつには、国策による支援に加え、住宅の購入プロセスの単純さがある。現在これだけ流通の自由化や多様化が叫ばれる中、大手メーカーの新規受注(紹介を除くと)はほとんどが住宅展示場を通じて行われる(フランチャイズは自社が展示場となる)。そして消費者は展示場内で大手メーカーの比較検討をする以外に道はなく、どこから買うかを決断する。まさに家電店で冷蔵庫を買うようなプロセスができあがってしまった。未だに1960年代のマーケティング遺産が存在する数少ない業界だ。
そして現在、大半の大手ハウスメーカーが取り組む最大の課題がCO2削減、省エネルギー、長期耐用住宅といった環境問題への対応だ。大量の工業化製品を供給し、寿命の短い住宅を提供してきた人たちが、こうした環境や耐用について語ること自体に違和感を抱くが、各社こぞって自然との共生、健康、省エネルギーへの真摯な取り組みを、これまた大量の電波、紙に載せて発信する。まさに「エコロジーに取り組む」というよりも「エコロジーに取り組む姿を見せる」こと躍起になる印象すら覚える。
しかし、この状況に異を唱える人は少なくない。ネットを中心に情報提供を続け、「日本人にとってふさわしい家とは何か」を真剣に考えている人たちは確実に存在する。
こうした流れもあり、ここにきて、大手ハウスメーカーに対してネガティブな物言いが増えてきた。大手ハウスメーカーの価格が体質的、流通システム的に高価格であること、必ずしも大手ゆえに満足度が高いということでもないこと、最近戸数を急激に伸ばしているローコストメーカーの訴求する価格にはからくりがあることなど、少し調べればわかることであり、住宅購入を検討する人にとってはすでに周知の事実だ。
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