コミュニケーションはいつの時代も重要なキーワードであり、古来より伝承されているコミュニケーションにかかわる慣例や慣習も多々あります。中には時代にそぐわないものも多くなってきています。日本の政府のコミュニケーションを見ていると以前より進歩してきているものの、時代にそぐわなくなっているケースをよく見受けます。
新年早々、鳩山内閣にも内閣発足間もない段階で閣僚が辞任するという激震が走り、「またか」と思った方も多かったのではないでしょうか。
閣僚のみならず、総理大臣さえも矢継ぎ早に交代していく日本の政治の風景は、世界の目からすれば尋常ではないといっても過言ではない中で、今回の辞任が「健康上の理由」ということを聞いて内心安堵されたのではないでしょうか。
その様な混沌とした状況下で新しく就任した菅財務相が発した言葉に今度は日本だけでなく世界に激震が走りました。例の「為替」に関する発言で、この発言が基になり円安が一気に加速したことは周知の事実です。
菅発言の是非をめぐり、利害が絡むだけに賛否両論が渦巻きましたが、重要な地位での軽率な発言というのが否定的な見解の大半でした。ここで冷静に考えると、はっきりとものを言わない閣僚が多い中で、具体的な考えを発信したことはむしろ評価できるのではないでしょうか。実際に株式市場も好感して上がったのですから、日本経済にとっても一時的ながらプラスの効果を生み出しています。
財務大臣たる重責を担う以上、自己の考えを明確にすることは当然のことですが、批判の背景には、たとえ考えがあっても口に出して言うべきではなく、黙して行動しろということがあったのかもしれません。古来より「不言実行」を美徳とする旧来型思考の人たちには受け容れがたい発言であったようです。
そもそも日本人の美徳とさえいわれてきた「不言実行」自体が、はたして現代のような情報社会の中で目指す姿なのかというと疑問を感じざるを得ません。
若かりし頃、上司や先輩諸兄から「余計なことは言わずに行動しろ!」と叱咤激励された記憶のある方も多いかと思います。上から与えられた個人目標を人には見えないところで努力を積み重ね、達成することこそが組織人としての本懐と思っていた方も多かったのではないでしょうか。
企業間だけでなく同一組織内でも個々が競い合い、刺激し合うことで個々の成果を上げ、組織としての成果も上げていこうというスタイルが多かった競争や比較が根付いていた時代には「不言実行」はそれなりの効果があったのかもしれません。
しかし、現代のような成熟した市場でしかも、個々の価値観や潜在力が多様化する社会の中で組織としての成果を上げていくためには相互が情報や考えを共有し合い、共に新たな価値を創りだしていく共創の概念こそが重要なのです。いわば足し算の成果ではなく掛け算の成果を生み出すために、発信することこそ重要なのです。
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2010.03.20
2015.12.13
松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役
人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。