会社の危機は経営者の責任なのか?現場はどうすればいい?
2010年1月18日、日経新聞5面「核心」で日本航空の法的整理に至る問題点が指摘されている。少し長くなるが、記事の冒頭を引用する。
<各航空会社との競争が激化するなか、経営者の怠慢もあって業務改革が遅れた。中年社員や退職者は既得権益に固執。また、公的な融資に安易に依存してきた。官僚も政治家も、地方空港を乱造して、そこへの運行を日航に半ば強制した。要するれば、世界大競争という現実を前に、過去の成功体験にとらわれ、予防的に手を打つのが遅れた。>
記事のタイトルは『日航は「あすの日本」か』であり、「危機見えても手を打てず」とサブタイトルにある日航の状況そのものが、現在の日本を象徴しているという論である。
記事の最後も印象的だ。ケネディ米元大統領の墓前の碑文からはじまる。<「国に何をしてもらうかではなく、国のために何をできるかを問え」。つい最近までの日航のように改革を嫌い、国を頼み、借金頼みを続ける現代日本人にとって耳が痛い話である。>とある。
長引く不景気で多くの企業が苦境に立たされている。その中でも、回復の見込みが立たない企業ほど、リーマンショックで景気が冷え込んだ結果、顧客離れが起きたとか。確かに株価時価総額の下落幅を見てもその劇的変化は間違いない。しかし、例えば日本市場は人口動態から見れば、市場縮小が確実なのはわかりきっていたことだ。経済危機と相まって、市場縮小のインパクトの大きさが昨今取りざたされているが、経済危機がなくても「危機はとっくに起こっていた」のである。非連続的に見える変化も必然が隠れている。変化を見ていない。見たくなかっただけ。
では、見ていなかったのは誰か。
「会社は毎日つぶれている」という本がある。6,000億円の巨額赤字を抱え、日商岩井とニチメンが経営統合した双日を再建した初代社長の西村 英俊氏の著書である。「会社を潰すのは不況ではない、社長だ」と本にはキャッチコピーがついている。会社は平時でもつぶれる要素は内外に散在している。危機が発生してから対処するのではなく、日々つぶれる要素を発見して排除し続けることがトップの役目であると説いている。トップが「見ていない」「見たくない」では、一発でアウトだ。
確かにトップの役割は重い。だが、トップの英断によって変れる企業は一握り。だとすると、そうでない企業は「緩やかな死」、もしくは「突然死」を待っているしかないのか。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。