引当金というのは訴訟の和解金や、違約金、製品保証など将来発生する可能性が高い企業の義務について計上するものですが、国際会計基準の改訂ではこの考え方が大きく変わります。
本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。
国際会計基準審議会(IASB)は2010年1月に
IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の改訂を
再提案する公開草案を公表しました。
この公開草案では、引当金の測定方法が大幅に変更されることになります。
現行の規定では、引当金は
(1)過去の事象の結果として現在の義務を有していて
(2)義務を履行するための経済的便益のある資源が流出する可能性が高く
(3)金額を信頼性を持って見積可能である
ことが要件になっています。
基準書に明記されていることで、(2)の「可能性が高い」というのは50%を超えるの可能性を指しています。
現行では発生する可能性が低ければ
引当金を認識することはありません。
認識する場合は支払金額の最善の見積りにより測定されることになり、
最も可能性の高い金額をもって引当金とする場合が多いと考えられます。
また支払金額自体も直接的な費用のみで検討していると思います。
一方、今回の公開草案では
企業が有する義務の期待現在価値を測定するアプローチが採用されています。
このアプローチでは、
企業の義務について予想されるすべての結果を加重平均して測定されます。
可能性が50%以下の場合でも、期待値の加重平均で認識が必要となります。
また、直接的な費用だけでなく、
義務の履行に必要な間接的な費用も含まれることになります。
この加重平均した金額から貨幣の時間価値を考慮して割り引きます。
今回の公開草案によると、
それだけでなく期待値から実際の支払額が乖離するリスクも
見積もらなくてはなりません。
例を見ると、5%など率でこのリスクを見積もることが想定されているようですが、
実際には判断が難しいところだと思います。
引当金の計上が必要になる場合というのは、
和解金や違約金など企業にとって債務を負うだけでなく
企業イメージの低下など悪影響を及ぼすことが多いので、
現実には計上が遅れがちになるようです。
今回の公開草案では発生可能性がそれほど高くなくても引当金が必要となるので、
引当金の計上が早い段階で行なわれます。
実務への影響は大きいのではないでしょうか。
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