技術を買う

2010.01.27

経営・マネジメント

技術を買う

野町 直弘
調達購買コンサルタント

「2013年住友ゴム工業が合成ゴムを使用しないタイヤを商品化」 「2014年三菱マテリアルが希土類(レアアース)をリサイクル事業化」 ・・・ 元旦の日経新聞「次の10年へ」という特集に掲載されていた記事です。

「2013年住友ゴム工業が合成ゴムを使用しないタイヤを商品化」
「2014年三菱マテリアルが希土類(レアアース)をリサイクル事業化」
・・・

元旦の日経新聞「次の10年へ」という特集に掲載されていた記事です。

妙にリアリティが溢れる技術革新情報ですが、
多分各社が発表したR&D計画に基づいてまとめたものでしょう。
一年間の経済予測、技術予測、トレンド予測はよく特集されていますが
今年はこのように10年予測のような興味深い記事もよく見られます。

我々が意識しようがしまいが、
このように技術革新は気がついた時には進んでいるのです。

年頭挨拶でも述べましたが、
今年は日本企業にとって新しい競争の基軸が生まれてくるであろうと考えています。

つまり従来の枯れた技術で中国やインドなどとコスト競争をすることには限界があり、
電気自動車やロボット、バイオ、その他の新しい基軸で
勝負できる企業が勝ち組になるのです。

こういう時代には「買い控え」ではなく「良い買いモノ」が重要になるとも述べました。

それでは今までとは違う「良い買い物」とは何が上げられるでしょうか?

私はその一つが「技術のソーシング(買い物)」だと考えています。

最近「オープン・イノベーション」という考え方があります。
これは企業が研究開発を自社内で行う自前主義を脱して、
基礎研究を大学・公的機関が担い、その成果を産学連携でベンチャーが受け入れ、
ベンチャーが生み出した技術開発の成果を大企業が取り入れ、
ビジネスにつなげるというものであり、1980年代以降米国で盛んになった流れです。

日本企業においても最近は外部から技術を買う、
ということを戦略的に進めている企業も増えているようです。
技術や製品の複雑性は近年益々増えています。
そういう時代には全ての技術開発の自前主義が成り立たなくなっているからです。

今までは、「技術のソーシング」は製品を介して行うのであれば
バイヤーがサプライヤとの取引という形で行ってきたわけですが、
米国ではベンチャーを買収するという「企業のソーシング」という形で進んできました。
製品を買うのか、企業を買うのか、という違いはあれども
いずれにしても「技術のソーシング」と言えます。

何かを買うということでつきつめると
「技術」「生産力」「労働力」の三種類位しかないですし、
今後その中でも「技術」を買うというポーションが高まることは間違いありません。

友人のベンチャーキャピタリストから聞いたのですが、
ベンチャーの技術を大手企業と結びつける業務をしている
ナインシグマ(http://www.ninesigma.co.jp/index.html)
という企業もあるそうです。
友人曰く
「技術ベンチャーは売り込むのが上手くない。
“こういう技術がこういう企業のこういう製品に使えるのではないか”
というようなアプリケーションの想像力が欠如しているから。
むしろ大手企業の意識の高い研究者の方が、必要な技術を良く分かっている」
と言っていたことを思い出します。
ナインシグマ社は技術の良くわかる目利きがその仲介を行うことで
技術購買を支援しているのです。

このように技術を見極め、「良い買いモノ」をする能力は
バイヤーにとっても欠かせない能力になってくるでしょう。
バイヤーにとってのチャレンジになるのは間違いありません。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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