満身創痍のトヨタに垣間見る慢心!

2010.02.07

組織・人材

満身創痍のトヨタに垣間見る慢心!

松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役

 世界のトップ企業として誇れる日本企業であるトヨタ自動車が揺れている。アメリカでもトップ記事で扱われるほどの過熱ぶりである。品質面で高い評価を築きあげていただけにその反動も大きいのかもしれない。しかし、今回問題を大きくしているのは車自体の品質面よりも企業自体の品質面ではないだろうか。

 トヨタ自動車が2009年度第3四半期の決算を発表した。一連のリコール問題による影響も踏まえた上での決算発表であったが、売上、損益ともに従来予想より改善し、さらに通期予想も2000億円の赤字から800億円の黒字へ上方修正した。立派な決算内容である。

 好業績とは裏腹にトヨタのリコール問題は日増しに大きくなってきている。特に海外で最大のユーザーを有するアメリカでの過熱ぶりは異常とも言えるレベルに達している。背景には品質面で劣後を許してきた国内メーカーによる針小棒大ともいえる品質に対する疑念に根差した攻勢にもあるようだが、問題の本質はやはりトヨタの体質にあるようだ。

 専門家の評価をみると今回のリコール問題によるトヨタの品質面への信頼は大きく下がってはいない。品質の問題レベルがそれほど高いわけではないこともあり、リコールや生産停止による業績への影響も一時的なもので軽微であると見られている。内容を把握している現行ユーザーの信頼は依然として高いものであることも伝えられている。

 しかし、風評による影響は今後の展開次第では多大な影響を及ぼす可能性を否定できない。情報化が進展した現代社会においては、風評や評判が企業に与える影響は多大であり、これらをうまくマネジメントしていく、「レピュテーション・マネジメント」の重要性が指摘されていることからも、今回の問題への対応が注目されている。

 ところが、社長が謝罪に公の場に登場したのが最近のことで対応の遅さが問題となった。その内容も具体性に欠けていて、ますますリスクが高まっているのが現状である。何故、これほどまでに後手になってしまったのか、何故、具体的な内容に言及できなかったのか、そこには長年にわたって築き上げた世界のトップ企業としての慢心が見え隠れする。

 社長の会見では、「どこに間違いがあったか?」に対して、「社内ではお客さまにとって安全、安心と受け取ってもらえる対応を取るよう指示している。」と当事者意識に欠ける発言である。また、「なぜ今まで会見に出てこなかったのか?」に対して、「社内で一番詳しい人間がお客さまに正しくお伝えするという方法をあえて取った。」とリーダーシップの欠如を露呈している。

 今でこそ、サービス業の占める割合が高く顧客視点に立った対応が重視されているが、そもそも日本の大企業の多くは製造業を主体として技術力により世界を席巻してきた経緯がある。その代表企業がトヨタであるが、高い技術力を背景とした信頼に対する慢心が障害となって危機感を実感できなかったのではないだろうか。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

松本 真治

松本 真治

有限会社ワースプランニング 代表取締役

人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。

フォロー フォローして松本 真治の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。