「噛む~とフニャンフニャン」のロッテのガム・Fit's(フィッツ)。佐々木希と佐藤健のCMも第3弾となって、ダンスはどんどん高度化するも、絶好調だ。しかし、「噛み心地が少し固くなった」との声がちらほら聞こえるようになってきた。何が起こっているのか。ロッテの戦略は?そしてガム業界はどうなっているのか?
■ガム市場は「付随機能」の戦い?
「チューインガムの発祥は西暦300年ごろ」(日本チューイングガム協会)。日本においても「初めて輸入されたのは大正5年」(同))というから大変な歴史である。故に、完全なコモデティーである。コモデティー、成熟市場ほど製品価値の「中核」とは直接関係ないが、その存在で製品の魅力を高める「付随機能」が勝負のしどころとなる。例えばコモデティーとなった「携帯電話」は、通話やメール、ブラウジングという中核価値とは直接関係のない、カラーバリエーションや、ワンセグ機能などが勝負のしどころとなっている。
成熟市場であるガムで特徴的な戦い方を始めたのが、「グリコ」だ。製菓大手のグリコであるが、ガム市場においてはわずか数パーセントのシェアを確保できているだけの存在。現状よりシェアが低下すれば「市場存在シェア」、即ち、人からヒントを出されて思い出せる(助成想起)レベルのシェアを確保できなくなるから必死だ。切り札は「パッケージ」。「新スタイルパッケージ・フラットスタイル」という、粒ガムをファスナー付きの袋にダイレクトに入れて「紙をむく手間がかからない」「ポケットに入れてもかさばらない」として、さらに捨て紙の収納ポケットまで付けるという工夫を施した。同社のガム「ポスカ」「スクイーズ」に用いてリニューアル販売を開始した。
■縮むガム市場と、リーダー・ロッテの使命
そのガム市場を見ると、2003年の生産額1,310億円をピークに右下がりに推移し、2008年時点で1,099億円と16%強の減少を見せている(全日本菓子協会調べ)。推測できることは高齢化による「ガムの忌避」が一つに挙げられるだろう。虫歯の治療跡や義歯の使用などで、高齢者ほどガムには手を出しにくくなる。高齢者比率の増加はガム使用量の減少とリンクするだろう。もう一つは若年層のガム離れである。咀嚼能力の減少と柔らかい食感の嗜好はガムから遠ざかる原因になる。
市場の縮小はシェアの大きな企業ほどダメージをかぶる。ロッテのガム市場のシェアは6割越えともいわれているため、影響は甚大だ。グリコのように他社と差別化して自社のシェアを維持・拡大するだけではダメなのだ。
ガム離れの前者、高齢者向けには「歯につきにくいガム・フリーゾーン」を開発した。そして、後者、若年層向けに投入されたのが「噛むとフニャン」というやわらかな噛み心地で昨年大ブレイクした「Fit's(フィッツ)」なのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。