アフターサービスに注力するためのパラダイムとは。
マーケティングというか営業の用語に、「ビフォーサービス」という言葉があります。「アフターサービス」が、買っていただいた商品のメンテナンスや情報提供などを行うことを指すのに対して、「ビフォーサービス」というのは見込み客の購入意欲を高めるための活動を指します。どのような商売でも、買っていただける可能性があれば、そのお客様に対して無料で色々なお役立ちをするものですが、それがビフォーサービスです。売上を上げるために行う活動全般とも言えます。
アフターサービスは「アフターフォロー」とも言うくらいで、何か不具合があってクレームになったらマズイから、一銭にもならないけれども仕方なく行う顧客フォローといった意味合いで捉えられがちです。営業に携わる人の多くにとってそれは、後ろ向きで成果につながらない感じ、余計な時間やパワーを要する感じがして、出来ればやりたくない活動、ついサボってしまいがちな活動です。
特に、リピートや継続があまりないと考えられる商品、例えばブライダルとか住宅などはアフターサービスをしたからといって「よし、もう一回買おう」とはなりませんから、そういう業界ではアフターを嫌がる人、軽視する人がとても多くなります。収益につながりにくい無駄な活動として、そこに予算を割かない企業もそういう業界に多いのではないかと思います。たとえ経営がアフターに注力しようとしても、現場では、自分の評価にはつながりにくい、目の前の数値目標達成にとって意味がないのでは力が入りません。
そういう企業の経営者や営業の皆さんは、「アフターサービス」が何故重要か、何のために行う活動なのかを捉えなおすことが大切です。アフターサービスは、顧客満足やブランド作りやクレーム防止のためにあるのではありません。その目的は収益性の向上です。つまり、「単発でちょっとだけ買ってくれる人をたくさん作る」よりも、「継続してたくさん買ってくれる人や、他のお客さんを紹介してくれるような人を育てたほうが、収益性が高くなる」のであって、そういうロイヤルカスタマーを作るには、アフターサービスに優るものはないわけです。
つまり、継続や紹介を狙う活動だとするなら、「アフターサービス」=「ビフォーサービス」であると言えます。買ってもらった後にする活動を、「アフター」と捉えてイヤイヤやっているか、その活動を「ビフォー」と捉えて前向きに成果を見据えてやっているか、これが売れる人かどうかの違い、ファンの多い会社と新規開拓に汲々とする会社の違いかもしれません。一発屋で、いつも忙しそうな営業マンと、安定した顧客との関係からコンスタントに成果を出している営業マンの違いは、「アフター」と考えているか「ビフォー」と考えているかの違いかもしれません。
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2010.03.14
2012.04.19
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。