3度目の挑戦「お~いお茶 ふっておいしいお抹茶」の狙いは?

2010.03.08

営業・マーケティング

3度目の挑戦「お~いお茶 ふっておいしいお抹茶」の狙いは?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 伊藤園からボトル内の「天然水」と「抹茶入りキャップ」に入った抹茶を振って混ぜ合わせることで、新鮮な抹茶飲料を作って楽しみ、味わう「お~いお茶 ふっておいしいお抹茶」が発売される。しかし、実はこの商品の市場投入は今回で3度目だ。その狙いはいったい何なのだろうか?

 3月8日(月)・つまり本日より全国で販売開始というこの商品、「 お〜いお茶 お抹茶 」という商品名で2008年6月30日に1都9県(東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、茨城、群馬、山梨、長野、静岡)でテスト販売としてスタートした。同年11月17日から「お~いお茶 ふっておいしい抹茶」と名を変え全国販売が始まった。前2回の発売時は275mlで希望小売価格198円(税込)というプレミアム価格での展開であった。今回は「お~いお茶 と、またビミョーにネーミングを変え、同量で希望小売価格150円(税別)と値下げしてのチャレンジだ。
 この商品は自販機での展開はなく、主たる販路はコンビニエンスストアであるが、恐らく店頭価格では税込み147円で販売されるのではないかと筆者は予想する。経済環境の低調が続く昨今、プレミアム系の緑茶飲料は販売不振となって続々撤退した。唯一、生き残った日本コカ・コーラの「綾鷹」も昨年158円から147円へと値下げに踏み切った。消費者の需要価格として150円という金額は一定ラインとして存在するのである。

 「ふっておいしいお抹茶」は容量が275mlと少ないため、150円ラインに付けても、まだプレミアム系の飲料ということになるが、一つの商機がある。前述の日本コカ・コーラの「綾鷹」が値下げと製品リニューアルに昨年から踏み切った際に、広告コミュニケーションも切り口を明確にしている。
 「本物にはにごりがある」。抹茶を配合して本格的なお茶のおいしさを強化した同商品は、PETボトルの中に明確に視認できる抹茶の「にごり」が特徴だ。それを「振って飲む」ことを推奨する。「振って飲む・本格的な抹茶ならこちらが本家」と、販売現場でうまくアピールできれば、伊藤園としては同商品単体で広告コミュニケーションコストをかけることなく、綾鷹が創った市場にうまく便乗することができるのだ。

 しかし、伊藤園の真の狙いはもっと大きな所にある。同社ニュースリリースによると、この商品で<本格的な抹茶の味わいを「ふって・つくって・飲んで」楽しめる本製品を提案することで、緑茶飲料市場の活性化を図ってまいります>とある。
 そうなのだ。緑茶市場は現在危機に瀕している。
 1990年以来順調に成長を続けていた緑茶飲料市場は、2006年に一度、成長の足踏みをしたが、再び翌年には回復した。しかし、2008年秋の経済危機が市場を直撃した。緑茶飲料市場だけでなく、飲料業界の勢力図を書き換える変化があったのだ。ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー類の伸びが軒並みダウン、もしくは足踏みになり、飲料の中で唯一、炭酸系だけが成長を続けるという構図になったのである。理由は難しくない。ミネラルウォーターは浄水器を使えば代替できる。茶やコーヒーは自分で淹れられる。炭酸だけは自分で作れない。故に買う。
 現在の状況でいうと、缶コーヒー飲料だけは各社が糖分や脂肪をゼロにするという「ゼロ飲料」化で巻き返しを図っているが、茶系飲料は出遅れている格好が否めない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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