2009年8月に「食べられるラー油」をコンセプトに発売し、ラー油分野のシェア十数%から60%近くまでを制圧したという、「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」。今なお、店頭では品薄が続き人気沸騰中である。そんな商品に対抗してヱスビー食品が参入してきた。「ラー油戦争」はどうなっていくのか?
2月末あたりからTwitterやSNS、または個人Blogで、「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」の愛称である「桃ラー」というキーワードが激増している。書き込みの内容を見てみると、ようやく生産が追いつき始めているようで、購入して試すことができた人が感想を書いてさらに口コミが拡大しているようだ。依然、というより一層大人気になっている。
「桃ラー」はフライドオニオンとフライドガーリックを大量に用いて、そのまま食べてもサクサクとした食感で美味しいのが特徴だ。「ご飯にのせて食べた」「パンにも合う」「パスタに合わせると絶妙!」と、書き込みを見ると、様々な使用用途が開発されているのがわかる。
元来はラー油など餃子のたれを作る時ぐらいしか使わず台所の調味料入れに入っていない家庭も多かったはずだが、折しも、不景気で内食志向が高まっている中、絶妙なネーミングで登場し、「食べてみたら美味しかった!」というギャップ感が受けて大ヒットした格好だ。
そんな桃屋の成功を見て猛追してきたのが、スパイス分野で長年トップの座を守り続けているヱスビー食品である。3月23日発売予定の「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」。<年間売上高3億5000万円を目指す>(J-CASTニュース3月9日)と強気である。
「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」の戦略を見てみよう。
まず、Product(製品)は、フライドガーリックやフライドオニオンが用いられているのは「桃ラー」と同様だが、差別化要素として<アーモンドが入っているのが特色>(同)という。
Price(価格)は一つの勝負所のようだ。<桃屋のラー油が110グラム400円前後で売られているのに対し、エスビーのラー油は同量で希望小売価格330円>(同)だという。
ここまでで考えると、ヱスビーは桃屋に対して後発なので製品に少し特徴を持たせて価格を2割弱安く設定して対抗するように見えるが、もう少し考えると真の狙いが見えてくる。
3C分析的にCompetitor(競合)である桃屋と、Company(自社)ヱスビー食品を見比べてみよう。資本金こそ桃屋・約19億円、ヱスビー約17億円だが、ヱスビーは上場会社である。売上高は桃屋約137億円・ヱスビー約1132億円、従業員数・桃屋308名・ヱスビー1179名と規模が大きく違う。
規模の違いはどこに出るか。例えば、ヱスビーには東京・板橋区に「スパイスセンター」施設があり、研究開発に注力している。「桃ラー」の大ヒットを見てからの開発であったのかは定かではないが、短期間での製品開発力が高いのは確かだろう。また、ラインを調整すれば、大量生産する力もある。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。