企業年金についての会計処理が今大きく変わろうとしています。日本の会計基準と国際会計基準双方の改訂について、その方向性を探ります。
本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。
従業員への退職金は
企業にとって非常に大きい債務なのですが、
実際に支払われるのは従業員が退職した後ずっと先のこととなります。
このように、すぐ支払わなくてはならない買掛金や支払う期日が決まっている借入金等
他の債務とは違う性質があるため、
企業年金などの退職給付に関する会計処理は以下のような特別な方法がとられています。
まず、従業員が退職してから払う退職金の額を見積もって、
そこから割引計算を行なうことによって現在の債務を算定します。
そして、年金資産としてすでに積み立てている資産分を差し引いた純額が
企業が負担している債務なのですが、見積りで計算を行なっているため実際の額と差が生じます。
それらについて、一気にオンバランスせず、
プラスになったりマイナスになったりする毎年の差異が
長期にわたって相殺され解消されるはずなので平準化して処理します。
具体的には差異の部分については従業員の勤務期間などの年数をかけて償却することとしています。
つまり、償却が済んでいないものは未認識項目としてオフバランスされることになります。
また、この償却の方法については日本基準が一定の年数で定額の償却を行なうのに対して、
国際会計基準ではコリドーアプローチという違う方法が採用されています。
しかし、この未認識項目をオフバランスする、という考え方は覆されようとしています。
例えば、経営破綻したGMには従業員の医療保障など多額の従業員給付が未認識であったことも話題になりましたし、
日本でもJALの退職年金が非常に経営を圧迫していたことがクローズアップされました。
経営を圧迫しかねない大きな債務を計上しないというのはおかしいという意見が多くなりました。
国際会計基準では
コリドーアプローチといった遅延認識は廃止して
これまでの未認識項目をすべて即時認識するという方針がすでに決まっています。
しかし、具体的にどのような処理にするかというところでは
審議が難航しているようです。
現在のところ、
勤務費用と利息費用を当期利益で認識し、
数理計算上の差異と年金資産からの収益(一部は当期利益で認識されます)を
その他の包括利益で認識することが暫定的に決定してます。
退職給付の未認識項目は負債の部に一括して計上することが
日本の会計基準でも採用されることになりました。
日本基準を適用している現状でも国際会計基準の影響は非常に大きいと思います。
退職金制度については企業の財政状態を一気に悪化させる可能性もあるので
制度の見直しや資本増強などの対応が必要となる企業が多いと考えられます。
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