面接官は「人を見る目」を過信してはいけないし、受検者だって面接官恐れるに足らず。目隠し面接で分ります。
仮に、受検者と面接官の間に仕切りを置いて面接をしたら、仕切りがなかった場合と面接の結果は変わるだろうか。さらに、ワイドショーでやる告発インタビューのように声まで変えたらどうなるのでしょうか。世に“面接のプロ”は多いので、そういう方は「変わらん」と断言されるのかもしれませんが、私自身でいうと合否の判断は変わるだろうと思います。話の内容だけでその人を判断することは、私には無理。目で見えることや声や雰囲気に大きく影響されてしまいます。
会った瞬間、多くの面接官は「いい感じ」とか「微妙」とか「難しい」とか結論めいたことが頭に浮かびます。面接でなくても、人は見た瞬間に相手に対するイメージを抱くものですが、面接官は合否の判断をしないといけませんので、そのイメージを○△×のような合否に結び付けて考えがちです。また面接の経験を重ねるごとに、見てすぐ「こういうタイプかな・・・」という直感が生まれてくるようになり、質問はその直感をベースにしたものとなります。良いように言えば、経験豊富な面接官ほど「仮説を立てて、質問によってそれを証明することが出来る」ということですが、悪く言えば「直感や先入観や思い込みから、逃れにくくなってくる」わけです。
例えば、面接官の質問に対して、とてもシンプルな返答があった場合に、見た目や雰囲気の印象がgoodであれば「端的に表現する力がある」と捉え、第一印象が良くなければ「ぶっきらぼう。説明能力に欠ける。」などと考えてしまうような場合です。こういうのは面接の合否判断として良いのかどうか。印象に左右されるなんて、面接官の風上にも置けないと考えるか、面接官も人間だから仕様がないと考えるか。視覚情報が一切ない状態、背格好や表情や身振り手振りが全く分からない状態でも、合否判断が変わらないのをプロと言うのでしょうか。
私自身は、見た目や雰囲気は仕事をする上で大切なことでもあるので、それが面接のジャッジに大きく影響することは何の問題もないと考えます。話がどの程度相手に伝わるかは、コンテンツ(内容)、ストラクチャー(組み立て)、デリバリー(伝え方)、プレゼンス(存在感)の4つで決まると言われますが、面接だって同じことです。伝え方や存在感(話し方や見た目の印象)といった正確に説明することが難しい要素が、面接官の判断に大きく影響するわけです。そんなのは面接のプロじゃない・・のかもしれませんが、多くの面接官の判断力とはそれくらいのものであり、そういういい加減さの中で進路が決まるのが人生だということも、受検者にとって大切な認識です。
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2012.05.09
2015.07.22
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。