各社が例年になく組織の改正、改編に動いている。2010年度4月からの新組織としての再編の運命はいかに。
厳しい経済情勢の中、多くの企業はパイオニアが言うところの「コストミニマム」という財務体質強化のための再編であることは間違いのないところだが、マーケティング的にも今回の組織再編の狙いが見え隠れする。
まず目立つのが、顧客対応のスピードアップ、顧客課題の多様化への対応、効率的な顧客提案を謳い文句に、事業部の統合、子会社の吸収合併を行う大企業だ。
NECはクラウド事業の拡大に向けて、「ITプラットフォームビジネスユニット」と「ネットワークソリューション事業本部」を統合する。
味の素は「味の素製薬株式会社」として、開発、生産、販売を一体化するために「味の素ファルマ」と「味の素メディカ」を合併する。
リコーも、国内の販売会社7社を統合し、「リコージャパン株式会社」を発足する。
日立は2009年10月にカンパニー制を導入したばかりだが、2010年10月からは、日立ソフトと日立システムを「日立ソリューションズ」としてスタートさせる。
INAXとサンウェーブは営業部門を統合し、「INAXサンウェーブマーケティング」を設立する。
リリース記事の中、IT関連企業で「ワンストップソリューション」という言葉が目立つ。「ワンストップソリューション」とは、ひとつのクライアントが様々な課題を抱える中、窓口となるひとつのアカウントですべての課題に応えようとすることだ。
事業やサービスによって、クライアント窓口を分けていたのでは、スケールの大きな提案へとつながりにくかったり、クライアントにとってもいちいち各事業部や子会社に説明しなければならないという手間もかかったりする。
また、情報システムの全社を通じた効率化や整合性を考えた情報システム戦略を描く上でも、クライアント側のあらゆる課題に精通した窓口であるのは心強い。
ベンダー側にとっては、顧客の様々な課題に対応しながら、新たな分野のサービスへと拡大する顧客の囲い込み戦略へと発展させていきたい、さらにひとつの顧客に対し、これまでばらばらと提案していたことを一箇所に固めることで、社内の輻輳していた業務の効率化もしたい、ということなのだろう。
明らかに、伸びを望めない国内市場においていかにシェア拡大を図るかをめざしたものだが、当然、この「ワンストップソリューション」にもリスクがつきまとう。
かつて、バブル崩壊のころにも、ITベンダー各社は、事業部一辺倒の拡大戦略から顧客満足重視のワンストップソリューション戦略を打ち出したことがあった。
しかし、合理化、一本化されたワンストップ体制からは、めまぐるしく変化する情報システム市場の中で、絶えずタイムリーな提案をし続けるというのは困難を極めた。毎日のように新しい技術が登場するITの世界と、システム化プロセス化された組織とは、元来そぐわない気がする。
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