今年1月にリニューアル発売された「ヤクルト ミルミル」が、3月25日・日経新聞にカラー全面広告を掲出するなど、さらに攻勢をかけている。その狙いと戦略は何だろうか?
ミルミルは1978年から27年の間、販売されていたが2005年に発売を終了。後継商品「ビフィーネM」に引き継がれていた。そのビフィーネMを2月末で販売終了させ、ミルミルを再投入してきたわけだ。
ミルミルはヤクルトがビフィズス菌を発酵させた世界初の商品として登場した経緯がある。今日ではポピュラーになったビフィズス菌飲料の元祖なのだ。ビフィズス菌を摂ることは、整腸作用と健康維持に欠かせないといい、さらにそれを生きたまま腸に届けるのがポイントらしい。
さて、この「生きたまま腸に届く」というフレーズ、最近よく耳にしないだろうか。実は今朝も都内各所でキッコーマンが「YU株」なる乳酸菌を生きたまま腸に届けるというヨーグルトをサンプリングしている。明治も「特別な乳酸菌」としてLG21で攻勢をかけている。小田和正がCMで「希望の光」を切々と歌う。なんだかカラダの調子がよくなる希望が見えてきそうな気がしてくる。ヤクルトはというと、「ヤクルト」もしくは「ヤクルト400」で「シロタ株」なる菌を届けることに注力している。俳優・渡辺謙がCM「腸を鍛える編」で「私は乳酸菌シロタ株で、毎日腸をトレーニングしています」といって飲んでいる。
しかし、こんな混戦状態では何を摂って、腸に何菌を届ければいいのかわからなくなってくるのが正直なところだ。自分の腸は1本しかないのに。
そこで、世界初のビフィズス菌飲料「ミルミル」の知名度が効いてくる。販売終了5年経っても、依然高い支持があったとヤクルトのニュースリリースは伝えている。「ヤクルト」は「シロタ株」。「ミルミル」は「ビフィズス菌」。どちらも必須だという。なかでも、ビフィズス菌は<生後間もない乳児期に大腸内のほとんどを占めるまでに一気に増え、有害菌等から赤ちゃんの体を守ってくれますが、その後、加齢やストレス、食生活の変化により大きく減少してしまいます>(同社ニュースリリース)という。
実はここがリニューアルに際しての、一つ目の「引き算」だ。旧ミルミルは「家族みんなで飲む」という訴求をしていたが、何故かメインは子どもに置かれていたような訴求をしている。1980年のCM( http://www.youtube.com/watch?v=Qwt0VwqdEeA )を見ると、今回のCMも踏襲しているクレイ(粘土)アニメーションだが、明らかに表現が幼児向けだ。その後、1980年代はタレントの故・清水由貴子が肝っ玉母さんを演じるシリーズCM( http://www.youtube.com/watch?v=mXv9V1OLdjY )のなかで、家族が各種ヤクルト製品を飲む姿が描かれているが、ミルミルは大人も子どもも飲んでいる。
少子化で子どもは減る。競合も大人向けの製品を続々投入している。そうしたマクロ環境、競合環境に応じて、「ミルミル再投入」において、バッサリと子どもをターゲットから削って「大人のための」というポジショニングを明確化したのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。