「フリーミアム」という新たなビジネスモデルが出現した!と騒々しいが、かつてのビジネスモデルとは一体何が違うのだろうか。
クリス・アンダーソンの『フリー』がいたるところで取り上げられており、賛否両論が飛び交っている。
書籍自体は、ジャーナリストらしく、「ゼロ」概念の話なども豊富にあり、読み物としての面白さは抜群だ。数学や歴史上のいろいろな話が登場し、経済学者に匹敵する見識もお持ちだ。
乱暴に紹介すると、デジタルコンテンツは在庫の必要もなく、ひたすら無料化に向かう。その無料化に伴って人が集まりビジネスが可能になる、といった内容で、他にも「フリーミアム」に関する様々なビジネスモデルが紹介されている。
しかし結局、私は昔からずっとあるビジネスモデルとの違いを最後まで理解することはできなかった。
ダイヤモンドオンラインでは、岸 博幸氏が「コンテンツは無料にならない」「違法コピーがタダにした」「制作と流通のうち彼らは流通の役割を担っているにすぎない」趣旨を掲載していたが、共感するところは多い。
日本ではここ数年いわゆる「無料もの」はかなりの勢いで出回っていた。現在は苦しい状況にはあるが、リクルートの「R25」「Hot Pepper」をはじめとして、「ただビジネス」はけっこうなメジャーだった。それ以前にも、地域フリーペーパーとして「ぱど」は1987年から発行されており、2004年には1200万部もの発行部数を誇った。雑誌だけではなく、そもそも民放のラジオ番組、テレビ番組は始めから無料だ。視聴率を上げ、広告を集めるという古くからの無料モデルとして日本人には深く根付いている。
ビジネスモデル論としても、リクルートで一気にメジャー化したころ(2008年)に西川りゅうじん氏が『0円で億を稼ぐ』(マガジンハウス)でこのフリーモデルはすでに紹介済みで、掲載されている事例の本質的な部分はほとんど同じだ。
クリス・アンダーセン氏はフリーモデルを4つ紹介しているが、このモデルにしても、『0円で億を稼ぐ』の中で、アンダーセン氏が言う「非貨幣経済」を除いた3つのモデルとして、「ギフト方式」「グロス方式」「三点方式」を紹介しており、骨子はほとんど同じだ。
このモデルを「恐るべき“無料化”の波」としてあおるメディアもメディアだが、これほどあおられると、何か新しいことが本当は隠されているのではないかとこちらも不安になる。
「フリーミアム」(一部の有料顧客が他の顧客の無料分を負担するモデル)というが、無料の人の分を有料の人が負担する以外にどんなビジネスの方法があるというのだろう?
企業の営業活動はすべてそうだ。車にしても家にしても試乗やお土産、イベントへの招待や接待など、新規の顧客に対しては手厚い営業活動を行ってくれる。その見込み顧客を集めるための広告費用も含めて、新規顧客開拓にかかわるこうした費用はすべて有料顧客が支払っている。
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