夏場に向けてこれから激しさを増す清涼飲料市場。その主戦場は「炭酸」「ゼロカロリー」となることは、昨今のトレンドから想像に難くない。その激戦地に明日・4月6日に参戦するのはサイダーの老舗ブランド「キリンレモン」の派生ブランドだ。大ヒットとなるか?その課題は何だろうか?
飲料事情の昨今のトレンドは、長引く不景気の影響が顕著だ。「水筒男子」が茶葉で淹れて茶系飲料が落ち込み、「水道男子」が浄水器を使ってミネラルウォーターが代替されて落ち込んでいる。「○○男子」は冗談のようなネーミングだが、飲料に関しては消費者の実態を反映しているといえるだろう。その中で、自分で作ることができない「炭酸飲料カテゴリ」は落ち込みを免れ、伸長している。さらにすっかり定着した健康志向は、清涼飲料だけでなくアルコール類にまで「0(ゼロ)」ブームを拡大している。「炭酸」×「ゼロ」がヒットのキーワードである。
そのトレンドにうまく乗ったのが、アサヒ飲料の「三ツ矢サイダー オールゼロ」だ。同商品は09年5月末上市され、「糖質ゼロ」「カロリーゼロ」「保存料ゼロ」という「3つのゼロ」を実現。それでいて「三ツ矢サイダーならでは味」であるとして、同年約540万ケースの販売実績を記録して「三ツ矢サイダーブランド」全体の業績を大きく底上げした。
透明炭酸飲料カテゴリの、もう一方の雄といえばキリンビバレッジの「キリンレモン」である。ところが、キリンレモンのラインナップには「ゼロ」がない。ブランドのターゲティングとポジショニングが「ゼロ」を上市するにはあまり整合性がとれない状態にあることにも起因しているのだろう。
「家族品質だもん」。キリンレモンの現在のブランドスローガンだ。
それを体現するかのように、現在のCMは小池徹平が小学生の男の子と一緒に冷蔵の前で「キリンレモンダンス」を楽しく踊っている。どう見ても大人向けではない。
その「大人向け」で「ゼロ」商品として、いよいよ投入されたのが、名前もそのまんまの「大人のキリンレモン」である。
キリンホールディングス横断の健康プロジェクト「キリン プラス-アイ」の傘の下での展開となる。同プロジェクトは第一弾として、「大人の毎日の健康生活を応援する」として、ノンアルコールビール、ウコン飲料、ヨーグルトなどに「回復系アミノ酸・オルニチン」を投入した商品群を展開した。「大人のキリンレモン」もその一翼を担う。
グループとしての展開であるが、キリンビバレッジとして「キリンレモン」への投入を決定したのは、単純に「キリンレモンブランド」の傘下で「大人の」を展開すれば、ブランドのポジショニングと不整合を起こしてしまうため、グループの展開は実にタイミングがよかったからだと考えられる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。