米国で販売が開始されたiPad。世界で年間500万台が売れると予想されているというが、499ドルという価格はいかにして決定されているのだろうか。アップルの値付けの意図を考察してみよう。
4月9日日経新聞3面総合欄に「iPad部品日本製影薄く 韓台勢が台頭 TDKの電池など採用わずか」という記事が掲載された。2008年発売のiPhone3Gでは、採用された部品の日本企業が11社ほど列挙された記事を見たが、わずか2年でのジャパンパッシングっぷりは何とも悲しい。
ただ、そうした視点より筆者は「iPadの販売価格に占める部品コスト」という内訳に注目したい。
最近は日経さんはリンクを張らせてくれないので、元ネタが同じ「インターネットウォッチ」から引用する。
<iPadの16GBモデル、製造原価は推定259.60ドル~iSuppliが分解調査>(インターネットウォッチ4月8日)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100408_359798.html
<米調査会社のiSuppliは7日、Appleが発売したiPadを入手して分解調査した結果を発表した><iPadのWi-Fi版16GBモデルの推定部品コストは250.60ドル。これに製造コストを加えると、製造原価は259.60ドルと推定している><これらのコストにはハードウェアと製造コストしか含まれておらず、ソフトウェアやロイヤルティー、ライセンス費用などは含まれていない>(同)ということだ。
499ドルの販売価格に対して粗利は約半分。上記に加えて流通コストやマーケティング費用なども含まれていないが、いずれにしてもオイシイ商売であるといえるだろう。しかし、その499ドルという価格はどのように決められたものなのだろうか。
価格の決定には、環境分析のフレームワークである「3C」と同じ視点が必要だ。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)である。
価格戦略の基本は、自社で製品の生産にかかったコスト(固定費の償却分+変動費=原価)にいくら利益を上乗せしていこうかと考える方法だ。最も自社としては考えやすく、赤字などになりにくい算出方法だと言える。iPadの場合、それが250.60ドルである。「自社視点・コストの積み上げ」では、その価格が顧客がにとって妥当と受け取られるかは保証の限りではなく、また、もっと高く買ってもらえるにも関わらず儲け損なうかもしれない。また、顧客は自社商品だけを購入検討対象としてくれるわけではないので、競合(Competitor)の視点が重要となる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。