「10分1,000円」をどう活かすか?:理美容業界の未来を考える

2010.04.15

営業・マーケティング

「10分1,000円」をどう活かすか?:理美容業界の未来を考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 日経MJ・2010年4月11日3面コラム「底流を読む」に「成熟市場の生き抜き方・運営の工夫で成長軌道に」と題してカラオケ店「ヴァリック」と、理容室「キュービーネット」の事例が紹介されていた。キュービーネットは1,000円理容室「QBハウス」を展開している。

 記事には以下のような記載があった。
 <理美容の業界には「10分1000円の法則」がある。10分あたりの料金設定の目安であり、このラインを下回ればそれだけ価格競争が激しいことになる>

 つまり、QBハウスは記事にあるとおり<割安感を前面に出してはいるが、料金設定はこの法則に則っている>のである。<旧来の理容店がカットやシャンプー、ひげそり、それに軽妙な会話までをパッケージで売っていたものを、QBハウスはカットだけ売ることにした。施術時間を短くし、見た目の料金を安くした。無理して経費を絞り込んだわけではない>という。まさしくこれぞ、成熟市場、かつ、低成長経済下における「引き算の勝利の法則」であるといえる。

 記事にはないが、その意味からすると、QBハウスは「既存業界を圧迫する価格破壊者」のように指弾されているが、全くの言いがかりもいいところであるわけだ。その点は、コミュニケーション研究所の竹林篤実氏が同社発行のメルマガで解説している。
 <4月12日の数字:時間単価10分1000円の勝負/理美容業界の法則>
 http://tinyurl.com/y2t9r38
 <(QBハウスが)条例改正によって事業存続の危機に追い込まれているのだ。要するに1000円散髪には洗髪台がないから不潔である、よって洗髪台の設置を条例によって義務づけよ、という流れが各地で起こっている。ユーザー無視、何とも理不尽ないちゃもんだと思う>との指摘は正にその通りだ。

 むしろ、無謀な戦いを挑んでいるのは既存業者のように思える。
 筆者の事務所の近所でのこと。ある個人経営の理容店がある日、店の前に立て看板を出した。
 「当店なら、シャンプー付きで1,000円」。
 1ブロック先にあるQBハウスへの対抗策だが、シャンプーまでして10分は無理だ。客が全く取れないよりはいいだろうと覚悟を決めての「値下げ」であろう。
 しばらくすると、看板には新メニューが加わった。「総合整髪コース1,500円」。つまり、ひげそりからセットまでの、従来のフルパッケージで4,000円程度で提供していたものを半額以下に値引きしたことになる。確かに自宅兼用の店舗で家賃不要なら何とかやっていけるだろうが、売り上げは激減のはずだ。値下げのデフレスパイラルに自ら飛び込んだ形になる。何とか、もっとうまい方法はなかったのか。

 毛がなければ商売にならない業界で「不毛な争い」はやめて、その「10分1,000円の法則」をもっと有効活用してみてはどうかと思う。
 美容業界の方に伺ったところ、美容業界は「1分100円の法則」だという。要するに同じだ。そこで、気になる記事を見かけた。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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