ドラッグストアで面白い商品を見つけた。その商品が売れるか否か。売れそうにないのであれば、どうすれば売れるのかを思考実験として考えてみた。
その商品はクラシエフーズの『メロンソーダの素』 『オレンヂソーダの素』。ひと言で言えば、いわゆる「粉末ソーダ」である。同社のニュースリリースを探してみると、2月25日に発表があり、<昭和30年代から40年代にかけて一世を風靡した粉末飲料「渡辺ジュースの素※」。クラシエフーズは当時の時代をしのばせるレトロなパッケージデザインと味わいで再現しました>とある。3月1日より発売されていたようだ。
注意書きのある「渡辺ジュースの素」をWikipediaで調べてみると、1958年(昭和33年)に1袋5円、無果汁の「渡辺のジュースの素」の発売を開始し、テレビCFには榎本健一を起用するなど、粉末ジュースで一世を風靡したようだ。しかし、1969年(昭和44年)に日本国内で人工甘味料「チクロ」の使用が禁止されたことが経営に大きな影響を与え、その後1972年(昭和47年)、カネボウハリス株式会社(現クラシエフーズ)に吸収合併され今日に至っている。
要するに、この商品は同社のリリースにもあるように、その商品の存在自体に昭和30年~40年代の歴史が凝縮された、なつかし製品なのだ。その懐かしさを更に高めるべく、商品パッケージの裏面には「昭和33年、東京タワー完成」や「昭和44年、アポロ11号月面着陸」などの昭和の出来事がイラストと共に記されている。
さて、この商品が「売れるか?」と聞かれると、正直、このままでは難しいように思う。
昭和40年生まれの筆者でも、「渡辺ジュースの素」はギリギリ記憶の圏内にあるかないかで、ターゲットのど真ん中ではないように思う。では、50代の人々がこの商品を回続けるかといえば、「なつかし商品」として手を1回は出しても継続購入は難しいだろう。同社のリリースによると、<家族で、また、子供や孫との団欒におすすめです>とあるが、やはりそれでは、「話のネタ」としての単発需要しか取り込めそうにない。
では、一発屋のネタ商品ではなく「売れ続ける商品」となることはできるのだろうか。
思考実験なので、マーケティングマネジメントに流れに従って、一つ一つ検証してみよう。
まず、外部環境だ。長引く景気の低迷は飲料業界を直撃している。特に小型PETボトル飲料では、自分で淹れられる茶系、浄水器で代替できるミネラルウォーターのへこみが激しい。「水筒男子」やら、その中に浄水した水道水を入れる「水道男子」やらのネーミングまで登場している。一方、微増ではあるが伸長しているのが炭酸飲料だ。なぜなら、自分で作ることができないから。
そのことから考えると、「粉末ソーダ」は、「浄水水道水派」が「たまには水だけじゃなくて、何かおいしいものが飲みたいなぁ」と思った時に用いる「自分で作れる炭酸飲料」としてのポジションを獲得できるのではないだろうか。それが、ターゲティングとポジショニングだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。