チーズ牛丼(並450円)、コーンマヨ牛丼(同430円)、辛みそネギたま牛丼。各種の具材がトッピングされた牛丼。しかし、それは「すき家」の話ではない。吉野家の新メニューだという。
<行けども行けども肉の山…サラリーマン“牛丼放浪記”>(4月17日・zakzak)
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吉野家で4月13日からスタートした、肉の量を従来の大盛りの2倍にした「特大盛(とくだいもり)」・730円の試食レポートを中心とした上記記事で見逃せないのが、吉野家の実験店がある世田谷で展開されているという「トッピングメニュー」についてだ。
トッピング牛丼はすき家の得意メニューである。業界最低価格の280円の牛丼に対し、各種トッピングがなされたメニューは380円~390円。いくら安くとも普通の牛丼ばかりでは飽きてしまうため、固定客が注文する。その価格差分がすき家の大きな収益源となっていると考えられる。
対する吉野家は、「並」でも業界最高値の380円。しかし、それでも利益率は極めて低い。トッピングは手を出したいところだ。
競合店と同様の商品を展開する戦略は、その企業の業界ポジションによって大きく意味合いが異なる。リーダー企業が下位の企業のヒット商品を模倣する場合、「同質化戦略」と呼ばれる。商品開発力と販売力に勝るリーダーが、ヒット商品と同等のものをすばやく開発し、市場に大量に投入して販売することで、先行する下位企業の商品を2位以下に追いやる戦略だ。有名な例では、スポーツ飲料の大塚製薬・ポカリスェットに同質化をかけた、日本コカ・コーラのアクエリアスがある。
一方、下位の企業がリーダー企業の商品を模倣する場合、「フォロアーの模倣戦略」というものになる。リーダー企業の商品よりスペックを一段下げて低廉な価格を設定し、リーダー企業の商品にロイヤルティーを持っていない顧客や、価格感度の高い顧客を取り込む、いってみれば落ち穂拾い的戦略だ。
では、吉野家の模倣的トッピングメニューは上記のどちらに当たるのか。
商品開発に関しては、実際にメニューを展開していることから、それほど障壁が高くはない。しかし、吉野家には同質化をかけて、すき家のメニューを席巻してポジションを逆転するだけの販売力はない。
だとすると、フォロアーに徹した模倣戦略かというと、それも成立していない。戦略が成立する条件はスペックダウンによって低廉な価格を設定してリーダーのおこぼれを取り込むことだ。リーダー企業であるすき家の価格の方が安ければ、顧客は流入してこない。
吉野家における現在の再々の悩みは、「客数の減少」である。
価格差によって、すき家、松屋へ「の顧客流出に歯止めがかかっていないのだ。では、トッピングメニューはどのような効果かあるかといえば、前述の通り、新規顧客の取り込みは難しい。自社顧客がメニューの幅の狭さに飽きて、他社に流出することを食い止める効果はあるかもしれないが、あくまで守りであって、攻めの戦略にはなり得ていないのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。