エースコックのカップ焼きそば、「JANJANソースやきそば」が売れているという。カップ焼きそばの不動の3強といえば「日清焼きそばUFO」(日清食品)、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」(明星食品)、「ペヤングソースやきそば」(まるか食品)であった。その一角に食い込み、切り崩すことに成功したのだ。その秘密は何だろうか。
<若者にうけた? “縦型カップ焼きそば”売れ行き好調 ~販売個数TOP3に食い込む>(4月19日oriconグルメ)
http://gourmet.oricon.co.jp/75478/full/
日経POSデータによると、3月15日の発売週はトップの「焼きそばUFO」次ぐ販売個数。を記録。4月に入ってからも「 一平ちゃん夜店の焼そば」と競い合いTOP3に食い込む(同)という好調さだという。
同商品はエースコックが2年の歳月を費やして開発した、「若者向けカップ焼きそば」であると、同社ホームページの開発ストーリーにあるが、そもそもの開発のきっかけは、「10~20代の食用率の低下」にあるという。
商品の大きな2つの特徴は、「縦型容器」と「ソース練り込み麺」だ。
まず、前者の容器については、カップ焼きそば市場30余年の歴史の中において、ほとんどの商品が角形、もしくは円形の平型容器を用いてきた。それに対して、若者の評価は「持ち運びが面倒」「容器が大きくて食べにくい」という不満を持っていた。例えば、従来の平たく大きな容器はデスクに置くとパソコンのキーボードを片付けなくてはならない。縦型にしたことで手軽に食べられ、何か作業などをしながらの「ながら食べ」にも対応できたという。
味は食生活の変化から「濃い味を好む」若者の嗜好に対応した結果、従来のように味付けソースを添付するだけでなく、麺の中にソースを練り込んだのだという。
「JANJANソースやきそば」は「10~20代の食用率の低下」に対応して、若者をターゲットに、「うける」商品を開発したということから、ちょっと考えると、よくある「若者の○○離れ」に歯止めをかけた成功例にも見える。
「○○」は「車」「ビール」に始まりもはや枚挙にいとまがないくらいにメディアに取り上げられ、消費低迷の原因の一端のようにもいわれる。それに対してネットでは「まぁ~た始まった」という反論がなされる。今回も一部でそのような書き込みが散見される。
しかし、「JANJANソースやきそば」の真の価値は全く異なるのだ。
コンビニでカップ麺の棚の構成を思い出して欲しい。カップ焼きそばはどこに置かれているだろうか。多くの店で棚の下の方、最下段に置いてある。平たい形状のため、上から見下ろす方が視認性が高いためかもしれないが、腰をかがめて、手を伸ばそうという気持ちは起こしにくい。平たくて大きな容器の形状は食べるときにも、いかにも「焼きそば食べてます!」という風情を醸し出してしまって、女性には手を出しにくい。新規顧客を獲得しにくい状況にあるわけだ。
試しに食べてみると、どうだろう。
容量の主流は麺100gオーバーだ。最大サイズの「ペヤング ソースやきそば超大盛タイプ」に至っては237gである。それは、ボリューム感を求める顧客の要望を反映して、長い歴史の中で徐々に大型化していった経緯を反映している。食後に炭水化物で胃を満たしたとき独特の膨満感に苛まれることになる者も少なくない。具材はフリーズドライのキャベツ、鳥ひき肉、ごま、香辛料、紅しょうが、青のりなどが一般的だが、この青のりがクセ者で、食後の歯ブラシを欠かすと午後の職場で恥ずかしい思いをすることになる。つまり、慣れないものが食べると、少なからず後悔することが多くリピートしづらい商品なのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。