日本の電子書籍化の方向が見えてこない。自由に公平に電子書籍を活用する日はいつくるのか。
先日「Scribd社」は、各社の電子リーダーやスマートフォンに対応するために、モバイルデバイス向けの製品を多数発表する予定で、1000万のドキュメントがスマートフォンや電子リーダーでも読めるようになると発表した。
「Scribd」社のサービスは「文書版YouTube」とも言われるドキュメントの共有サービスだ。「Scribd」にアップロードした文書ファイルは瞬時にFlashに変換され、簡単に閲覧できる。ブログに埋め込むことやコメントを掲載することも可能だ。
この「Scribd」社が、「ソーシャルパブリッシング」サービスとして大きな成長の兆しを見せている。
「インプレスR&D」によるAdler社長のインタビューによると、「2009年の半年間でユーザーは2倍になり、1500万ユーザーとなった。コンテンツは、350億ワードのテキストと多くのビジュアルが登録されている」という。収入の大半はこのドキュメントの販売ではなく、「Google Adsense」から得ているというが、すでに黒字化していると語っている。
「Ebook2.0 Forum」を運営する鎌田 博樹氏は、「ドキュメントのコンテクストに対応したSNS機能が、ユーザーにとっても、またビジネスモデルとしても重要」だと語る。また、さらに重要なのは、同氏も提言しているように運営側が持つプロフェッショナリティであり、ドキュメントの技術的な集約、供給だけではなく、知的財産・コンテンツ供給者、運営者としての編集、カテゴライズ、コンテンツクオリティの維持といった情報受信側に対する信頼関係の付与だ。
日本でも似たようなサービスとして、ファイル共有サービスがあるが、アダルトものを含んだコミックが立ち並ぶトップページは、ビジネスとしてのプロフェッショナル感を得ることはできないし、運営側のポリシーやビジョンを感じることもできない。
アメリカの出版社協会(AAP)は、2009年のアメリカにおける電子書籍の売上高が前の年と比べて2.8倍の3億1300万ドルに達して、オーディオブックの売り上げを追い抜いたと発表した。
出版全体の売り上げはわずかながらのダウンであった分、余計に電子書籍の伸びが強調された形になった。
この数字だけ見ると、日本でケータイ向けマンガ、ケータイ小説、グラビアの売り上げが500億近いこと、あるいはコンテンツ点数も数十万点ある点を取り上げ、日本はすでに電子書籍化先進国だとする向きもあるようだが、ケータイ向けのこうしたコンテンツが数十万だろうが数百万点だろうがドキュメントやテキスト、論旨、アイデアなどが必要なビジネスマンにはほとんど関係ない。
知的ビジネスで日々身を削るビジネスマンがほしい書籍あるいはドキュメントは、ビジネスに役に立ち、自身の知的欲求を満たすものだからだ。
今後の市場全体の広がり、可能性や現在の電子ドキュメントのサービス環境を比較すると、もう完全に周回遅れ、あるいはガラパゴス化の様相だ。
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