「Fit’s」に見る、ロッテのブレないリーダー戦略

2010.05.07

営業・マーケティング

「Fit’s」に見る、ロッテのブレないリーダー戦略

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ロッテのガム「Fit’s」にまた、ニューフレーバーが登場した。しかし、今回は単なるフレーバーの追加ではない。それは、ガム市場のシェア6割ともいわれる圧倒的なリーダーであるロッテが「Fit’s」で切り開く戦略の第3章を意味しているのだ。

 2009年3月24日の発売直後からバカ売れし、4ヶ月で3,000万個という未曾有の記録を樹立。3種のフレーバーのうち1種は生産が間に合わず、4ヶ月も販売休止。日経MJのヒット商品番付にも載るなど、その話題は佐々木希と佐藤健の大人気CMだけに止まらない。

 「Fit’s」はそもそもロッテが、<ガムのトップメーカーとして、特にガム離れが目立つ若年層をターゲットに、今までにない新しいガムでチューインガム市場を活性化させなければと、強い危機感を持って>開発したガムである。<若い人の食生活を調査した結果、「ガムを噛むと口やアゴが疲れる」など、硬い食感を好まない人が多いことから、20代前半の男女をコアターゲットにした、ソフトな食感のガムの開発>をしたという。(同社ニュースリリースより)
 柔らかな噛み心地は「かむとフニャン」というコピーにも代表されているが、CMのダンスも全て「フニャン」で整合を図っている。

 その「フニャン」に微妙な変化が起きたのが、今年に入ってからのことだ。噛み心地を少し堅めにリニューアルしたというのだ。

 さらに今回新発売されたのが新ブランドの「Fit's LINK」。「オリジナルミント」と「ノーリミットミント」の2種のフレーバーである。
 商品の特徴としては、<これまでと一線を画すスタイリッシュなデザイン>という黒をベースとしたパッケージデザインと<噛むたびに砕けるメントールチップの新食感&清涼感>であるという。(同社ニュースリリースより)。食べてみれば、確かにミントが強く、「ノーリミットミント」はなかなかの刺激感である。そして、ニュースリリースによれば「メインターゲットは30代男性層」だという。

 「Fit’s」は前述の通り、「20代前半の男女をコアターゲットにした」という明確なターゲティングが成功の大きな要素であったので、さすがに今回は戦略にブレを感じる…かというと、実は裏には別の狙いが感じられるのである。

 「Fit’s」発売当初のフレーバーは、大人気で売り切れとなった「ミックスベリー」と「シトラスミックス」「ペパーミント」の1種だ。若者好みの果実系2種にミント1種。その後、発売されたのが少しミントの刺激を強めた「エアーミント」。続いて、再び果実系の「ピーチミックス」を加えた。そして、今回が派生ブランドで今までになく刺激の強い2種のミントを展開したわけだ。
 フレーバーの変化で見れば、本来のターゲットの好む果実系を中心に、それでもしつこくミント系を展開している。フレーバー以外では、噛み心地を堅めにするという調整をしている。これが何を表すのか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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