鳩山首相にみるビジョンなき迷走~八方美人が八方ふさがりに~

2010.05.10

組織・人材

鳩山首相にみるビジョンなき迷走~八方美人が八方ふさがりに~

松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役

連日紙面をにぎわしている沖縄県の普天間米軍基地移転問題。以前から常在していたこの問題も、今年ほど注目を浴びた年はなかったであろう。当の沖縄県民だけでなく、日本国民全体がその行方に注目し、その最大の責任者である鳩山首相の言動に一喜一憂している。といっても、最近は「一喜」はなく、「一憂」の連続である。もはや、鳩山首相のリーダーシップを期待する声は殆どない。リーダーシップの観点から考察してみる。

 昨年の総選挙で「最低でも県外」としてきた鳩山首相の発言は公約ではなかったのか。「綸言汗の如し」、トップに立つ者の発言は、周囲への影響度は高く、重みがある。果たして、この重みをどの程度感じておられるのであろうか。

 本来、在日米軍基地の在り方の問題ではあるが、飛行場の県外移設という方法論に焦点が当てられ、本来のあり方や目的が見失われている感がある。そもそも目的は沖縄県民の負担軽減であり、安全、安心、平穏な日常生活の実現であったのではないだろうか。

 安全保障の観点からは、米軍基地の所在と中国や北朝鮮の脅威とは表裏一体の問題であり、多方面の利害が複雑に絡み、一方の側面だけから判断できないのがこの問題の解決を難しくしている。
この様な現状を的確に把握しようとせずに、利害の相反するアメリカ政府と沖縄県民や連立与党双方に対して八方美人的な対応をしてきた結果として、現在の様な八方ふさがりの状態を招いているといっても過言ではない。
 鳩山首相の進め方は、それぞれの立場に立った現状の考察ができていないという体たらく振りである。果たしてこの様な御仁に日本国の首長を任せておいていいものだろうか、甚だ疑問に思うのは当然の理である。

 企業の組織においても、この様なリーダーは結構いるものである。本来利害が一致しない複数の相手に対して、八方美人的な対応をして一時的に好感度が向上するものの、成果を上げられず時間の経過とともに八方ふさがりに陥ってしまうタイプである。
 尤も、依然として5月末決着を公言されているので結果が明らかではない現段階では、一国の総理である鳩山首相とこれらのリーダーとを同一視するのは不謹慎かもしれない。しかし、現時点で明るみなっていることからでも、リーダーとしてリーダーシップを十分に発揮しているとは言えないことは確かである。
 
 組織の命運を担うリーダーであれば明らかに失格である。そもそもビジョンが不鮮明である。そして、現状の的確な把握ができていない。
 本来、良きリーダーであれば、ビジョンを鮮明にした上で、現状を的確に把握し、そのギャップを埋めるべく行動計画に落とし込んで行動に移していくものである。
 鳩山首相の場合、5月末決着発言が先行し、ビジョンが不鮮明で現状も的確に把握できていない。その上、説明責任さえ全うできていない。このような状況下では、後手後手の行動に陥り、将来を導き出すことができないのは必然の理である。

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松本 真治

松本 真治

有限会社ワースプランニング 代表取締役

人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。

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