1990年代から若者やファミリー層を中心に広がった「フリーマーケット」。最近では、フリマと略されることが多い。略されるのはそれだけ人々の口に上る機会が多いからだ。すっかり世の中に定着した。さらにその進化形ともいえるべき動きから見えてきたものを考えてみよう。
フリーマーケットのフリーは本来「free」ではない。確かに無料ではないが、自由な感じなのだが、「flea」、蚤(ノミ)だ。つまり、蚤の市だ。<もともとノミのわいたような古着が主な商品として扱われていたことに由来するとか、ノミのようにどこからともなく人や物がわき出てくる様子を表現したなど言われているが、語源は定かではない>とWikipediaに記述がある。それが、<蚤の市という呼び名は、「蚤」の持っている不潔感なイメージから、歴史のある古物市ではガラクタ市、ボロ市(世田谷区など)といった名称が使われ、最近の若者・ファミリー向けの大規模イベントとして開催されるものは、フリーマーケットというケースが多い>という変遷を経て、今日では楽しいイベントとなったのだ。
なぜ、フリマが楽しいかといえば、本来は品物を現金に換える手段、商行為であるものが、前述の通り「イベント化」しているからだ。出展者との会話や駆け引きが、掘り出し物を求めたり、必要なものだが新品を買うにはちょっと勿体ないものを手に入れたりという本来の目的と同等かそれ以上の価値を持つようになっているからだ。
つまり、フリマとは、モノを手に入れるための消費という意味合い以上に、「コト消費」としての側面が強いのである。
「コト消費」とは、本来、商品の所有よりも娯楽性・体験性・物語性などに価値を求める消費行動を指し、物品の購入ではなく、旅行や外食、エンターテイメントなどへの消費支出を意味する。
長引く景気の低迷でコト消費も沈滞している。その中で昨今の傾向は、単純に無形のサービス・商品である「コト」を購入するというよりも、「モノを手に入れる際に、同時に体験するコトを重要視して購入するする」という傾向が強まっているように見える。つまり「モノ消費のコト消費化」である。そして、フリマ人気の定着はその一端を示すのではないかと考えられるのである。
「モノ消費のコト消費化」のさらに顕著な例が昨今見て取れる。
2009年秋からスタートした「Pass The Baton」は、クリエイターや著名人の愛用品やリメイク品を売っていくというコンセプトで立ち上がった。「売る」のではなく次の人に「バトンを渡していく」ということが、リサイクルを意味している。現在では一般でも出品ができるが、一つのルールがある。モノを通して、持ち主個人が持っていた価値観を次の所有者と共有するような仕組みを前提にしていることだ。具体的には出品者が自分写真にプロフィールに加え、出品するモノ持つストーリーを添えて登録・発信する。その情報を通して購入者が出品者の人となり、価値観や思いを共有するというものである。つまり、単なるモノではなく、それにまつわるコトを購入する。もしくは、モノ以上にコトが重要視されて取引されていくという仕組みなのだ。
※Pass The Baton → http://www.pass-the-baton.com/
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。