国際会計基準の中でも最近もっとも注目されているトピックが金融商品です。しかし、その複雑な内容から敬遠している方が多いようです。日本企業にとって避けられない問題ですので、ここで最新情報をキャッチアップしましょう。
金融商品会計については現行のIAS第39号が改訂されている最中ということもあり、「あまりよく分からない」という感想をよく聞きます。実際に私も質問をよく受けるのですが、多くの方が難しさと同時に重要性も感じているようです。
そこで現在の金融商品会計の状況を簡単におさらいします。
IASB(国際会計基準審議会)は金融商品会計の改訂を以下の3つのフェーズで進めています。
①金融商品の分類と測定
このフェーズでは金融資産と金融負債それぞれについて検討することになっています。
金融資産についてはすでに改訂が終わり、IFRS第9号として公表されています。IFRS第9号について解説した記事もありますので、参考にしてください。
簡単にまとめると、有価証券などの金融資産は公正価値で測定するものと償却原価で測定するものの2分類により、評価を行ないます。
この分類では、
・金融資産について貸付金としての性格がある
・企業としてもその金融資産の元本と利息を回収するように管理を行なっている
という要件を満たした場合に償却原価で測定するものと判定されることになります。つまり、株式などの有価証券、組込みデリバティブなど多くの金融資産は公正価値で測定することになります。これまでの企業の保有目的などに基づいた分類とは違う考え方になりました。
一方、金融負債は現在公開草案を公表し検討が続けられています。
金融負債は公正価値オプションを選択した場合、企業自身の業績悪化により倒産リスクが高まると自己の負債の公正価値が下がり、その分利益が認識されるという処理がなされてきました。
企業の業績が悪化すると利益が出るのはおかしいと批判が多かった問題点が扱われています(こちらも過去の記事を参考にしてください)。
②減損
先に触れた金融資産の分類で償却原価で測定されるものについては減損会計が適用されます。国際会計基準では公正価値で評価しない資産は基本的に減損の規定が作られています。
減損についても公開草案が出ています。公開草案では金融資産の将来キャッシュ・フローの割引現在価値が簿価と比べて低くなる場合、この差額を減損として損失処理することを提案しています。
③ヘッジ会計
ヘッジ会計というのは原則的な処理をするならば損益として認識されているはずのものを認識しないという特殊な処理を認めるものです。非常に例外的といえる処理であるため、例外や複雑な規定をできるだけ排除したいと考える国際会計基準の方向性と相容れない部分があります。
そこでヘッジ会計の適用範囲を狭め、処理自体も大幅に簡素化するという方向で審議が進められています。しかし、公開草案は当初昨年末までの公表が予定されていましたが、現在もまだ公開草案は出ていません。
このように金融商品会計の改訂で扱われているトピックは非常に重要なもので金融機関だけでなく一般事業会社にも影響があります。すでに公表されたIFRS第9号が公開されるまでの流れを見ても、基準書が確定するまでさまざまな議論が戦わされ、最終の決定が確認できるまで気が抜けない状態でした。
2010年中にはこれらのフェーズすべてが完了する計画となっています。金融商品会計の動向がこれから大いに注目されることになると思います。
野口由美子
株式会社イージフ
http://aegif.jp/
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