調達改革推進者を讃える-その1-

2010.06.19

経営・マネジメント

調達改革推進者を讃える-その1-

野町 直弘
調達購買コンサルタント

ロサンゼルス駐在の中堅バイヤーAさんは自らIPOを立ち上げられた方です。調達改革推進者の方にはそれぞれの物語があります。

「6年前にここ(ロサンゼルス)に一人で来たときは、何かあって落ち込んだらここに来て海を見て気晴らしをしていました。そうすると嫌なこと、全部忘れられるんですよね。」

ある中堅バイヤーAさんの言葉です。

サンディエゴのISM総会終了後に購買ネットワーク会で知り合った大手電子機器メーカーのバイヤーAさんがロサンゼルスのIPO(International Purchasing Office)にいらっしゃるということでずうずうしく訪ねて行きました。

何故今の時代に米国なのか?と行くまでは思っていたのですが、話を聞くと米国から買うとメリットが高い部品はまだいくらでもあるそうです。
また彼らは日本の一事業部のIPO組織ということだけでなく日本の各事業部から「こういう部品を探してほしい」と頼りにされています。また最近では日本だけでなく米国内の各工場のためのサプライヤ開拓まで請け負っているそうです。つまりIPOと名付けているものの、チームごとグローバル集中購買機能のかたまりのようなものです。
最近では、彼らの力で調達した部品や取引を始めたサプライヤによって大きなコスト削減を実現し、本社からもなくてはならない重要な機能として位置づけられています。またAさん一人で立ち上げたチームですが6年間で10人ほどのチームにまで成長しており、ロサンゼルスの中心街に綺麗なオフィスを構えるほどにもなっています。

しかし、ここまで育てあげてくるのには相当な苦労があったようです。

Aさん曰く「最初の頃はノイローゼになりそうでした。社内からも「やってみろ」と出されたものの、効果を出さないと、あいつは何をやっているんだ、と見られるし、何よりも自分が何でここに来たのか、悩んでばかりいました。」そこで冒頭の言葉につながったのです。

「初めは何でもよいから日本の要望に応えて動くことからスタートして、いくつかの案件で小さな成功を収めることで、だんだん好循環に回るようになりました。自分で言うのも何ですが、今は上手く回っています。」
Aさんはこう言い切る。

「アメリカのビジネスのやり方は日本とはかなり違います。でもこっちに来て思うのはこういうやり方をすれば上手くいく筈だ。ということですね。
まず大きな違いの一つ目は『ハードを揃える』ということです。
こっちでは必要であればブラックベリだろうが、ポリコムだろうが、お金をかけて当然です。自分たちで基幹システムからエクセルへデータを落して加工して発注している世界なんか信じられません、発注システムなんかオラクルとかSAPが当然の世界です。
不景気だからって出張旅費をケチるなんて考え方自体が間違っています。そんなことで仕事ができる訳ありません。仕事がしやすい環境があるのが当然なんです。
ただ一方では『死ぬほど働け!』ですよ。こっち来て感じるのは、日本人よりもよっぽどアメリカ人の方が働いている、っていうことですね。」
Aさんは続ける。
「あともう一つの大きな違いは『自分のチームが作れる』ということですね。それも本当に優秀な人員が集まってくる。特にこの地域には日本語、英語が堪能で職を探している人間も少なくない。それも超優秀な人材です。これで上手く行かないわけがないですよね。」

Aさんは年齢は30代の中盤で日本にいたら係長~課長というポジションだろう。アメリカに来ているからここまで自分のやりたいことがやれているとも言える。しかし、それは彼自身が苦労を覚悟の上、自ら飛び込んだ世界であるからだ。
そして今は自らの力で調達改革を成功に導いている。それは決して大きな成功や改革ではないが、大きな成功や改革はこのような「小さな成功の積上げ」でしか実現できないことを改めて実感。

また「チャレンジないところに成功はない」ということを教えてもらいました。Aさんの今後の益々の成功を期待したいと思います。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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