「ゆとり世代」を批判する「“実はゆとりな”世代」。

2010.06.21

組織・人材

「ゆとり世代」を批判する「“実はゆとりな”世代」。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

私だってバブル入社なので、若い頃はゆとりのあった世代だ。社会に出てきたいわゆる「ゆとり世代」を非難することなく、皆で一緒に頑張ろうじゃないか。

ゆとり世代が社会に出てくるようになって、彼らを蔑んだり、馬鹿にしたりするような物言いが(特にネット上では)目に付きますが、その内容については異議があります。例えば、ゆとり世代は学力が低いという点については、そもそも「ゆとり教育」になって、いきなり学校で学ぶ分量や時間が減ったわけではなく、恐らく30年位前からは既に教科書の分量は徐々に減ってきていて、だから現在40歳代の人達も含めて、徐々に学力は低下してきていたんじゃないかという見方もできます。少なくとも、自分たちはマトモなのに、突然これまで見たことがないような学力の低い世代が誕生したように言うのは当たっていないでしょう。

常識や振る舞いがなっていないという指摘もありますが、そんなことは昔から学校のカリキュラムにはなかったわけで、ゆとり教育が原因でないことは明らかです。常識というものは親や大人や先輩を見て、マネをしながら学ぶような類のものであって、彼らが「あいさつもできん」「言葉遣いがなってない」「マナーを知らない」のであれば、親や大人や先輩がそうだからではないのかと思います。「あいさつもできん」「言葉遣いがなってない」「マナーを知らない」上司、大人を会社でも街でも見かけますが、それをマネしているだけではないか。少なくとも、自分たちはマトモなのに、突然これまで見たことがないような常識のない世代が誕生したように言うのは勝手な話です。

だいたい、ゆとり世代をバッシングして、何かいいことがあるのでしょうか。つまらんネタを書き続けて政権をバッシングし、支持率を落として総理を替えてしたり顔をするメディアと一緒で、全くメリットのない、生産性のないことをやっているようにしか見えません。世代間の争いはやめて、共生するにはどうしたらいいか。彼らがちゃんと就職して、仕事の力をつけてこれからを背負えるようになるためには、どうしたらいいかを考えることが大切なんではないかと思うわけです。

夕方の早い時間から居酒屋に繰り出して、退職金がいくらになるかとか、今度の賞与がどうなるかとかいう算数と、社内政治と自分の身の処し方、部下や他部署の批判などをのん気に語っている人達を見ると、なんとゆとりのある人達だろうと感じます。「ゆとり世代」という呼称は、実はこちらの世代に相応しい。そんなことを言うと、「こっちは昔苦労して、今の立場や処遇を手に入れたんだ」とおっしゃるでしょうが、20年も成長が止まっている大変な時代には上の人間が身体を張り、骨身を削るのが当然と考えますし、今の若者世代を作った責任だって全員に少しずつはあるはずなのです。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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