先日、自動車メーカーの工場内で痛ましい事件が発生しました。そこから考えておきたい企業が対応すべき「事件」と「事故」の違いと対応方針について。
まず、自動車メーカーにおいて発生した事件において、1名の従業員の方が亡くなられたことにつきましては、心よりご冥福をお祈りいたします。
ここでは、企業が考えるべき「事件」への対応について書いていきますが、まずは事件と事故の対比、その後に対策の在り方についてまとめます。
◆ 事件と事故を分けて考えているか?
まず、事件と事故の違いについて整理してみます。
事件・・・犯罪の嫌疑がある事実(故意か過失かは問わない)
事故・・・犯罪の嫌疑のない事実
犯罪とは、簡単に言えば、違法行為であって責任を有するものと言えるでしょう(詳しくは、刑法の教科書を参照下さい)。
また、この意味において、交通事故は、事故という名称ではありますが、そのほとんどにおいて過失が認められるため、事件として立件されることになります。(飛び込みによる自殺などが立証された場合のみ事故として処理されることになります)。
こうしてみると、労災認定される傷病は、その原因が会社の管理責任や個人の故意・過失によるものと確認されたものについて認定されていることが分かります(最近では、会社が改善対応をしない事案についても、会社側としての責任が問われるようになってきています)。
◆ 事件への対応と事故への対応について
まず、事件への対応ですが、結論から言うと、会社としての組織的リスクマネジメントに対するセンスの問題となります。
企業とは、利潤追求のための活動を行う組織体であって、そこで構成される人員の道徳観念や日々の活動プロセスについて細かく管理できるものではありません。
そのため個々人の雰囲気や日々の行動の全てを管理できないことを前提に、就業規則では「服務規定」や「服務規律」が定められています。これを守ることを従業員に求めているわけです。
しかし、犯罪とは、そのような取り決めに対する逸脱行為ですので、いくらルールを定めていても、事件の発生を無くすことはできません。よって企業は事後対応しかできなくなります。
この点が明確になっていなければ、今後、今回の自動車メーカーの事件に基づいて広がるであろう「企業側の管理責任」という見えないプレッシャーが強まっていくことになると思いますが、個人的には、対策の方向性によっては無駄も多くなると考えます。
企業は、経営上の「管理責任」を果たすために、社内に様々なルールを定めています。事件の発生を回避するための抑止力としての取り決めを明文化し、従業員へ浸透させていくわけですが、この取り決めそのものに従わないと決めた人間にとっては全く無力なものと言わざるを得ないのです。
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