「ここまでできたのは、理解があるトップがいたからです。」ある中堅バイヤーBさんが遠慮がちに言いました。 ある企業の開発購買の取組について述べます。
「ここまでできたのは、理解があるトップがいたからです。」
ある中堅バイヤーBさんが遠慮がちに言いました。
前回の購買ネットワーク会で、ある機械メーカーのベテランバイヤーの方が過去十年に渡る開発購買と原価企画の取組について紹介いただいたときの話です。
この会社は10年前は販売・開発・製造が分離しており、そもそも開発購買・原価企画はおろか、集中購買も進んでおらず、購買部は単に決められたものを発注するというオペレーショナルな機能が中心でした。
それがこの4月からは全社の調達推進部門が発足し、開発部門と対等に位置づけられるだけでなく、原価全てに責任を持つ部署としてグループ全体の集中購買を推進する組織・機能として機能強化されるまでにいたったそうです。
彼らの約10年にわたる改革活動は抵抗勢力との戦いの毎日だったようです。
元々2003年に全社CFT(クロスファンクションチーム)として各部門から10名程度の調達チームを結成したものの、開発部門から理解が得られず、解散。今度は、物理的に開発・製造・購買を集約し、調達部門を設置したものの開発からは依然理解が得られず、製造・購買出身者が日々布教活動をしていったそうです。
この3年程の停滞期間を打破したのは、結局は改革に携わった方々の地道な活動でした。調達部門としては当たり前な競争入札やコスト査定の手法の伝授、やってみせ、やらせてみせ、納得してもらう。キーパーソンの攻略に、同じ目的を共有させるために、サプライヤとの交渉に同席をさせたり、コスト情報を共有すること、いい提案や役立つ情報を日々持っていくことで、少しずつ理解を得ること、、
このような活動を梃子にして3年前にようやっと調達部門の役割・機能強化が果たされ、原価企画機能を強化することにいたったのです。
バイヤーBさんは最後に3つのKFS(成功要因)を上げました。
「一つは経営トップの後押し、二つ目は開発部門キーパーソンとの意思疎通、三つ目は頼られる関係づくり、これがポイントです。」
私は実は8年前にこの企業さんの支援をする機会がありました。その当時のことを考えると本当に彼らが大きな改革を成し遂げたことを実感しています。正直その当時は購買部門は殆どないに等しい状態。彼らのビジネスモデルは営業が高く売り、販売会社が利益確保できるための基準原価を提示して、製造はその原価に収めれば、それでよし。製販の機能や意識はかけはなれており、本当の原価の情報がお互いに共有されていない(と言うか隠している)状況でした。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。