ケンタッキーフライドチキン(KFC)の次世代店舗・第1号店「KFC渋谷公園通り店」が7月8日にオープンする。その狙いはどこにあるのだろう。
<“揚げないチキン”の衝撃! 世界初ケンタッキーの次世代店が誕生>(7月4日 東京ウォーカー)
http://news.walkerplus.com/2010/0704/7/
同店の売り物は<オーブンで焼くノンフライのチキンや、野菜をたっぷり使ったサンドイッチなど>というヘルシーメニューを中心としたラインナップだ。すでに「フライドチキン」という社名との論理的整合性すら放棄したワケは、世の「健康志向」への対応が大きいのだろう。2008年4月から法制化された特定健診・特定保健指導、通称「メタボ検診」はカロリーたっぷりなファストフードを気軽に食べることを躊躇させるには十分なハードルとして機能する。何と言っても年に一度の健康診断で、毎回「メタボ」のレッテルを貼られる恥辱は耐え難い。
メタボを気にするオジサンへの福音と思うと、実はKFCの狙いはそこにはないようだ。同社の4月28日発表のニュースリリースを見直してみる。
http://japan.kfc.co.jp/news/news100428kfc.html
それによれば、<主として、若い女性層をターゲットに、お食事に、カフェタイムに、ちょっとしたブレイクにと、お気軽にご利用いただける店舗として、個食需要の獲得を狙います>とある。さらに、今後の予定も<主要なターゲットとなる若者層、女性層の集まる首都圏を中心に展開し、今期中に3店、3年間で100店の出店を目指します>としている。
確かに白とシルバーを基調として赤を差し色にしたオシャレな店舗デザインは女性好みを意識したようにも見える。さらに、<店舗デザインとあわせたシャープなイメージのユニフォームは、店舗スタッフの意見を取り入れてデザインした>と、細部まで抜かりはない。また、リリースを見ると同店は女性店長を起用しているようだ。
女性ターゲットでKFCが期待しているのは「お一人様需要」だ。前掲の一文にも「個食需要の獲得を狙います」と明言されている。さらに<飲む冷たいデザート「Krushers」をはじめとしたカフェタイムにおすすめのデザートやドリンクなど、さまざまな機会にご利用いただける商品をご提供します>とカフェ需要の獲得への意欲も明確にしている。
昨今の日本のフード業界においては、「カフェ市場」をめぐって乱戦状態が続いている。旧来の「喫茶店」という、ちょっと苦いブレンドと紫煙渦巻く薄暗い空間を、低価格・高回転率のビジネスモデルを持つセルフカフェが駆逐した。一方、1996年にスターバックスが日本市場に進出して「シアトルスタイル」の店舗も現在は定着している。そんな日本市場の特殊性は女性のお一人様ディナーではカフェの利用が顕著であり、フードの充実が求められている点だ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。