ロッテリアが銀座にシェーキ専門店をオープンした。マクドナルドは新型店舗への改装やチキンメニューの強化を開始。ケンタッキーフライドチキン(KFC)は「揚げないチキン」メニューを中心とした新型店の展開を始めた。しかし、ロッテリアは少々趣を異にする。その展開を少し深掘りしてみよう。
ファストフードにおける注目すべき動きの1つが「チキン戦争勃発」ともいえるマクドナルドとKFCの戦いだ。もとよりチキンメニューの販売量では国内ファストフードの中でも首位だったマクドナルドが、「チキンといえばマクドナルド!」という、消費者の第一想起ブランドの地位を確立せんと仕掛けた戦いだ。迎え撃つKFCはヘルシーな揚げないグリルチキンメニューを開発して差別化を図っている。
マクドナルドのおしゃれ感たっぷりな新型店舗がもう1つの注目ポイントだ。ゆったりした店内に、斬新でオシャレな什器が並ぶ。但し、100円メニューは存在せず、メニュー単価も既存店より最大50円アップ。デフレ不況下でも徐々に値上げしつつ、成長するというマクドナルドの真骨頂である。
経済学者のイゴール・アンゾフは、企業の成長戦略を4つにパターン化した。いわゆる「アンゾフのマトリックス」である。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4つだ。
既存の顧客に従来製品の使用頻度を高めるのが「市場浸透」。既存の顧客の満足度を高め、カフェの代替などによって利用頻度の増大を図るマクドナルド新型店の展開がそれにあたる。
既存の顧客に新商品を提供するのが「新商品開発」。チキン戦争はそれに該当する。
新たな地域や今まで取り込めていなかった属性の顧客に従来の商品を提供するのが「新市場開拓」。KFCの揚げないチキンは、カロリーを気にして敬遠しがちだった若い女性や中高年を取り込む効果もあるため、一部、この要素が該当するだろう。
では、ロッテリアの「シェーキ専門店」はどうか。
<『銀座 SHAKE PARADISE』が7月9日(金)に新規オープン!高品質でヘルシーな「ジェラートシェーキ」を各種発売!>(同社ニュースリリース)
http://www.lotteria.jp/news_release/2010/news07050001.html
以下、マーケティングミックスの4Pを見ていこう。製品(Product)は、ニュースリリースには<創業当時から継承されているさっぱりとしたミルク感豊かなシェーキをベースとして、さらにおいしく、高品質なデザートドリンクを開発。新しいデザート「ジェラートシェーキ」として販売いたします>とある。従来のシェーキは果汁シロップを使用しているが、それを果実や野菜のピューレに置き換えトッピングも施している。また、<ヒアルロン酸をトッピングしたサプリシェーキ"+Supple ヒアルロン酸 +α(+サプリメント ヒアルロン酸+α)">などの機能性成分を果汁やハチミツ、ローズヒップなどで飲みやすく調整したものまである。
価格(Price)は360円~420円。従来のシェーキは210円なので、ざっと倍である。
販売チャネル(Place)である店舗は単独店1店舗のみだ。銀座数寄屋橋交差点、不二家レストランの入っているビルの角である。元々、地下にロッテリア店舗があったが、入り口部分に看板が掲示されているだけの狭小なデッドスペースを活用している。そのため、テイクアウトのみで席はない。
プロモーション(Promotion)は現在のところ、単独店舗での展開のためか広告などは特に行われておらず、ニュースリリースを取り上げたメディアの記事がネット上に散見される程度だ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。