資格取得に向けて暴走ぎみの「緊急人材育成支援事業」という日本の職業訓練の仕組みについて、思うところを書いてみます。
現在、私自身がこの「緊急人材育成支援事業」に基づく職業訓練プログラムの講師として「基礎演習」というスキルアップではない、就職し働き続けるための総合講座を担当しています。
そして、その講座と受講生とのやりとりを通して感じる、様々な疑問についてまとめておきたいと思います。
◆ 職業訓練で高めたスキルをどう活かすのか?
一般的に、緊急人材育成支援事業による職業訓練とは、就職活動を円滑に行えるように「採用希望企業から評価される能力を高める」ために開講されているはずです。
しかし、講座の多くは、営業スキル、WEB開発スキル、Word&Excelスキル、経理や財務処理及び簿記等の資格取得や各種事務系講座など、個人的には、やや安易なトレーニングになっていると感じる部分も少なくありません。
実際に、職業訓練で開講されている講座の一覧(http://www.javada.or.jp/kikin/index.html)を拝見すると、純粋な疑問が浮かびます。
それは、その講座を受けて就職する先の業種・業界及び職種では、人材が飽和していないのか・・・と。
以前のコラムにも書きましたが、簿記資格は2級と3級で年間10万人の有資格者が誕生しています。しかし日本には600万社しか会社がありませんし、管理部門の人材はそうそう転職も退職もしません。1社に1名の経理担当がいるとしても…。需給バランスが気になります。
管理部門系の業務について勉強しても、私自身が管理部門に長くいましたので、採用を行うことはないのではないかと…思うのです。
業務プロセスを学ぶことと、実際に実務で様々な悩みを解決してきた経験は決定的に異なりますから、採用には躊躇するはずなのです。
本当に実務担当者を欲している企業であれば…。
また、WEB系の講師の方々などとも話すのですが、WEB開発の仕事は価格の下落が半端ない状況で、一部ではダンピング合戦の様相も見せています。そんなところに新たに就職をするという可能性がどこまであるのかという意味でも、気になります。
最後に、WordやExcelができることが再就職の必須条件だったのは、それこそ2000年前後の話です。今更、WordやExcelができるだけで就職できるという企業がどこにあるのかは、ハローワークがよく分かっているはずなのです。
◆ これからの職業訓練について思うこと
特定のスキルアップで再就職を成功させるためには、必要条件があります。
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