仕事の幸福感~“low aimer”の満足か“high aimer”の不満足か

2010.09.03

組織・人材

仕事の幸福感~“low aimer”の満足か“high aimer”の不満足か

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「できる人ほど仕事が集中する」―――これは組織における仕事分布の法則である。そしてできる人・頑張る人ほどカラダを壊す。そんな中、組織には能天気に雇われ続ける人もいたりする。なら、いっそ能力や向上意欲などないほうがシアワセなのかもしれない……そんなことを考えてみる。


 ◆5合目で満足したAさん・頂上まで登ろうとしたBさん
 山は、登る者にさまざまな楽しみを与えてくれる。たとえ山頂まで登りきらずとも、途中途中で十分に自然を満喫させてくれる。いまAさんは、5合目まで登ってきた。そこには視界の開けた場所があり、ふもとの村も見渡せる。心地よい風も通る。Aさんは木陰に腰を下ろし、「ここまでの景色でもう満足」と弁当を広げはじめた。満腹になったAさんはもう下山のことしか頭にない。
 一方、Bさんは、高い位置に登れば登るほど視点が変わって、もっと景色を楽しめることを知っている。だから5合目で休憩をとった後、登山を続ける。しばらく上がっていく間に、急に天候が悪化してきた。霧が周囲を覆い、景色などさっぱり見えなくなった。Bさんにとってその山は初めてだったので、6合目まできたのか、7合目まできたのか感覚的にもさっぱりわからなかった。雨も降り出し、やむなく下山することに。
 ふもとの村に下りると、Aさんが温泉に浸かり、すっかりくつろいでいた。「いやぁ、こんな天気になってしまい残念でしたねぇ」---まったく悪気なく声を掛けてくるAさんに、Bさんは「いやー、お天道様ばっかりは恨むわけにもいきませんから…」と答えるのが精一杯だった。

 ……さて、ここでは「幸福感」ということを考えたいのだが、冒頭の話において、はたしてAさんのほうが幸福なのだろうか、それともBさんのほうが幸福なのだろうか?
 つまり、Aさんは5合目までを望み、5合目の景色を楽しんだ。だから、Aさんの望みの満たされ度は10割だ。一方、Bさんは頂上(10合目)を望み、5合目以上の景色は楽しめなかった。その意味では、満たされ度5割である。そのうえ悪天候でズブ濡れになって体力は消耗するわ、危険にもさらされるわ、というネガティブなおまけ付き。
 単純に、望みがどれだけ満たされたかという指数でみるかぎり、満たされ度10割のAさんはより幸福であり、満たされ度5割のBさんはより幸福でない、といえる。
 もちろん、もし、この日ずっと天候がよかったなら、Bさんは頂上まで登り、満たされ度10割となって、Aさんより幸福になれたかもしれない。しかし、それはあくまで「タラ・レバ」の話。登山は常に、一歩一歩上ろうとするたびに、体力消費と諸々のリスクが増えることを覚悟しなければならない。

 ◆いっそ頑張らない方がシアワセなのか?
 この問題は言ってみれば、
 「low aimer」(=低い目標設定者)の満足と、
 「high aimer」(=高い目標設定者)の不満足と、
 どちらが幸福なのか、
 そしてまた、あなたはどちらの生き方を選ぶか、という問いだ。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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