今日は、とんでもない中国のポイントカード事情から、マーケティングプログラムの目的と弊害について触れてみます。
先日、北京に出張に行った人から聞いた話があります。
中国の書店では、本を買おうとレジに向かう人がいると、近寄ってきて「"この書店のポイントカード持ってるか? 持ってなければ私のを使え、安くなるから"」とポイントカードを渡す人がいるというのです。日本から出張で行っている人が書店のポイントカードを持っているわけもなく、安くなるならとポイントカードを借りて5%引きなどで書籍を買い、またポイントカードをその人に返すのです。
その書店は5フロア5000坪、北京で最大どころかアジア圏で最大級の、日本でいうと丸善のような立派な書店。でも店員は注意するでもなく放置しているので、そういう人がレジ前にたむろしていて、店員よりもそういった人のほうが多い場合もあるとのこと。
さらに言うと、その人たちは書籍を購入するタイプの人ではなく、おそらくそうしてポイントを貯めてステージが上がった会員カードを他人に売っているのではないかという話。
そもそもポイントカードとは、その店舗でよく買い物をしてくれる人にはお得になるサービスを提供することでロイヤルティを高めてもらう優良顧客サービス。ところが、初めてその店に行った、おそらく二度と来ないだろう旅行客にロイヤルカスタマー向けの割り引き価格で購入させ、その購買でポイントを貯めているのは書籍に縁のない人……そして、店員はその状況を放置している。これではマーケティングプログラムの意味がどこまであるのでしょうか。
さすがに日本では、コンビニで買い物カゴにお菓子や飲み物を入れてレジに向かう人に「私のポイントカードを使ってくれ」という人は見たことありません。もしいても、少なくともレジ前にたむろしないでしょうし、店員が注意するようになっていくでしょう。ところが、そこまでひどくないにしても、マーケターの意図したものとは異なる状況がないとは言えません。
・レストランに入って注文して食べ終わってからケータイでその店のクーポンを探す
・ネットショップで会計直前になってからメールマガジンのログを調べてクーポンコードが届いていないか探す
・契約しようと決めているサービスに申し込む直前にアフィリエイトでそのサービスのアフィリエイトプログラムがないか探して自分買いに適用する
店舗側の本来の目的としては、クーポンは来店促進のためや購買の後押しのために提供しているものですし、アフィリエイトは紹介してくれた人に利益を割り戻すことで通常はリーチしづらい顧客層にも商材を知ってもらえるようにするためのもの。
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2015.07.10
2015.07.24
安田 英久
株式会社インプレスビジネスメディア Web担当者Forum編集長
企業のウェブサイト活用やウェブマーケティングに関するメディア「Web担当者Forum」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/)を運営しています。