「女も食するスイーツといふものを、男もしてみむとてするなり」と紀貫之の土佐日記さながらに、今日、仕事帰りの男性がコンビニでスイーツを購入していく姿は珍しくない。一方、オヤジの牙城であったロードサイドの紳士服チェーンの店内でも、若者の姿が散見されるようになり、あまつさえ妙齢の女子フレッシャーの姿さえある。
上記のような客層拡大が変化の第一弾とすると、さらなる第二の変化が起きている。取扱商品のうち「チョイ高」というアッパーミドルクラス価格帯の商品が登場し、売れ筋になっているのだ。一体どういうことなのだろうか。
コンビニスイーツの流行と男子ファンの増殖の理由はさほど不思議ではない。
まぁ、簡単にいえば、不景気でいろいろなコトに疲れたココロを癒すには、甘味が一番であり、スイーツなどというオシャレな言葉も誕生した。さりとて、たまのハレの日でもなければ高級店での購入はままならない。一方、コンビニ各社はタスポ効果に沸く頃から、翌年の反動は目に見えていた。代替となる稼ぎ頭が欲しい。そこでスイーツブームに目を付けたわけだ。
専門店だと敷居が高いがコンビニなら購入のハードルも低い。男も買える。海外ではカフェやレストランで豪快にケーキを食する男性をいくらでも目にすることができるし、日本男子はアルコール離れだの草食化だのといわれる今日、食べない理由がない。そして、ケの日(日常)需要や男性需要を巡り各社は商品開発にしのぎを削り、市場が形成されたのである。
紳士服チェーンの若年層と女性顧客増加もさほど難しい話ではない。
その動きが顕在化しはじめたのは、従来ロードサイドにあった店が都市部・街ナカに進出してきた頃からだ。ロードサイド時代は沿道にのぼりを立て、新聞チラシを大量にばらまき、店内にはダサイ音楽がかかっているというオヤジの巣窟のような存在として昔は若者の目には映っていたことだろう。
それらの紳士服各社は若者向けデザインのスーツを19800円・29800円などの「2プライス」で販売する展開をはじめた。中国での大量生産をし、価格を低減するだけではなく、デザインや縫製の細部にも徹底してこだわる。最上級のものではないがイタリア産生地なども用いるようにした。女性用のスーツも展開した。デフレ時代に「安い価格で中くらいの品質の商品を提供する」という「グッドバリュー戦略」は的中し、若者だけでなく30~40代も取り込んで大成功した。そのデザイン・モノ作りのノウハウを本体にフィードバックしたのだ。昨今はさらに撥水性や伸縮性などの機能も盛り込んだ。
男女の若年顧客層増加も時流に合っていた。バブル期のように百貨店で1着購入して就職活動を行うのではなく、1着目も低価格であること。長引く活動期間で夏物などの2着目も必要であるからには、低価格と丈夫で動きやすい機能性は必須要素である。その要件に紳士服チェーン店はミートしていたのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。