アジア最大級の家電・IT見本市「CEATEC JAPAN2010」が5日から幕張メッセで開幕したが、「アップル対抗」をあらわにしたともいえる、電子書籍端末やスマートフォンが実に面白い動きを見せている。
電子書籍の配信からスタートする、シャープのグラウド事業“GALAPAGOS(ガラパゴス)”の専用端末。商品名が「自虐的」とも揶揄されるが、シャープは広報の発表で<常に新鮮なユーザー体験をもたらすサービスと端末の「進化」の象徴として、イギリスの地質学者・生物学者のチャールズ・ダーウィンの「進化論」で有名なガラパゴス諸島に由来」>していると発表している。
Twitter上ではかつてのシャープのキャッチフレーズ「目の付け所がシャープでしょ」をもじって、「目の付け所がガラパゴス」ともツイート(つぶやき)されていたが、言い得て妙というか、それこそがこの商品の本質を突いている。ガラパゴス島の生物は、島の外来種に必死に対抗して生きている。外来種とはアップルのことに他ならない。
シリーズには2つのサイズが用意されていて、「5.5型モバイルタイプ」と「10.8型ホームタイプ」である。アップルのiPadは持ち歩くには大きく、かといって、3.5インチのiPhoneのサイズではちょっと(筆者の年代では非常に)つらい。5.5型のモバイルタイプは、いってみれば、文庫本サイズともいうべき大きさで、混んだ日本の通勤電車で使用するにはもってこい。狭い島国の地の利を活かした展開であるといえるだろう。
コンテンツの配信方式も、驚くべき提携が発表された。10月5日の日経新聞。
<シャープ・CCC提携 TSUTAYAのノウハウ活用 電子書籍や映画20万点>
記事によれば、両者は合弁会社を11月にシャープ49%、CCC51%出資して設立。ガラパゴス向けにまず12月から電子書籍3万冊を、来年3月以降マンガ、映像、音楽、ゲームなど配信を拡大するとある。
米国ではコンテンツ配信はアップルがアップルストアで独占支配している。その陰で、米国最大のレンタルビデオチェーン、ブロックバスターがレンタル需要の落ち込みで、9月22日にニューヨークの連邦破産裁判所に連邦破産法第11章(チャプター11)の適用申請をした。シャープとCCCの提携は米国と極めて好対照であるといえるだろう。
日本人は元来、外部のものを取り入れて、自国の文化や思想・技術と融合させるのが得意である。岡倉天心は「和魂洋才」、伝統的な精神を忘れずに西洋の文化を学び、調和を図れと説いた。また、聖徳太子も「憲法十七条」で「和を以て貴しとなす」と説いた。「カドを立てるな」と誤読されがちな言葉だが、本来は、派閥・党派に偏らず、互いに睦まじく話し合いをして合意すれは、道理にかないものごとが成しとげられるようになるという意味だ。
シャープのGALAPAGOSは、アップルの端末を日本の事情に合わせて最適化しつつ、メディア配信の覇権を握るのではなく、相互メリットのある提携関係を構築して市場を拡大しようという動きであると読み取れる。極めて、良き日本的な展開であるといえるだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。