試す勇気と状況をつくりだす力~「七放五落十二達」の法則

2010.11.08

仕事術

試す勇気と状況をつくりだす力~「七放五落十二達」の法則

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

仕事・キャリアにおいて「先が読めないから行動できない」というのは言い訳です。まずは行動してみないから、先が見えてこないだけの話です。7割読めたらサイを投げよ!

◆人はリスクと引き換えに何かを得る
 リスクに対する「危機」という訳語は実に奥深いものです。そこには、危険(デンジャー)と機会(チャンス)が同居しています。飛行機が飛ぼうとするとき、抵抗する風を浮揚力に変え、機体は地を離れます。サーファーにとって荒ぶる高波は命を奪いかねないものですが、いったんその波に乗るや、このうえなく爽快な瞬間を獲得することができます。考えてみれば、人はリスクをコントロールし、リスクと引き換えに何かを成し遂げるものです。

 私は仕事柄、さまざまにキャリアの相談を受けます。「組織に新たな提案をしたいとは思うのですが……」「転職を考えているのですが……」「留学したいのですが……」「独立しようと思っているのですが……」「異動希望を出したほうがいいか迷っていて……」。こうして悩む人は多いのですが、大方は不安や保身心から二の足を踏むことになり、それなりに冒険を回避して、それなりの結果で妥協することになります(場合により、その選択は中庸の道を選んだのであって、決して悪いとはいえませんが)。
 しかし、思い切って何かを試していれば、大きく自分が拓けたかもしれません。仕事やキャリアづくりにおいて、ひとたび何か試してみよう、変化を仕掛けてみようとするとリスクが伴います。リスクとは、事態が悪化する可能性、体力や経済力を失う可能性、みずからの信用を落とす可能性、周囲から非難される可能性、等々です。

 これらリスクを挙げていけばきりがありませんが、リスクも考えようです。平成ニッポンにおいての仕事上のリスクです。命を取られるわけでも、給料がゼロになるわけでもありません。自分が決めた建設的な目的を持って、変化を仕掛けて、自分を試す。そこでたとえ現象面で失敗したとしても、何か取り返しのつかない惨劇が待っているでしょうか。おそらく、そこで得られる心境は、「これで、またひとつ状況が進んだぞ。得たものは大きい」―――ではないでしょうか。目的に向かう意志の下では、自分を試すことに失敗はないのです。
 歴史上の偉人の生涯はもちろんですが、私たちが身近で見つける「あ、あの人の人生はいいな」において忘れてはならないことは、その人は必ず、あるタイミングで勇気ある決意と行動を仕掛けたということです。

◆7割見えたらサイを投げよ=七放
 私は、仕事上で自分試しを何らかの形で仕掛けようとしている人に対して(自分自身に対してもそうですが)アドバイスしていることは単純明快です。―――7割レベルまで計画、夢、志、理想像が見えるのであれば「GO!」です。
 ただし、健康であること、家庭環境がある程度安定していること、そしてその計画に対し情熱があることの3条件が付いた場合です。7割レベルでいったんそのプランを放ってみるということで、私はこれを「七放」(しちほう)と名づけています。
 俗に言う石橋をたたいてから渡るのか、石橋をたたきながら渡るのか。仕事やキャリアづくりは、時間をかけて意志決定すれば、必ずいい答えが持っているとは限りません。状況や仕事の縁といったものは、刻々と変化していきます。動くときは勇気を持って大胆に動くことが自分を拓いていく要です。この複雑な社会、複雑な人生において、どんな行動プランであれ、10割読み切るということは不可能です。たとえ読めたとしても、世の中がそのプランどおりに展開してくれる保証はどこにもありません。
 7割まで来たら、まずサイを投げる。そして出た目を見て、次のプランを考え、また行動する。その繰り返しの中で、道が見え、道が固まってくるものです。

次のページ◆不測の状況と葛藤し道を探り当てる=五落

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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