中国ビジネス10のミスマッチ(8/10)

2007.10.11

経営・マネジメント

中国ビジネス10のミスマッチ(8/10)

坂口 昌章

中国アパレル企業は直営店でブランドイメージを高め、「代理商」ビジネスで利益を確保している。あくまで直営店戦略を採るとしても、日本には存在しない「代理商」システムを理解するは不可欠だ。

8.直営店ビジネスと代理商ビジネス

 日本のアパレル業界は、SPA型(製造小売型)のビジネスが中心になろうとしている。企画・生産管理を商社や企画会社に委託する企業も増えており、その意味では製造業から小売業に近づいていると言えるだろう。アパレルのMDやデザイナーは、商社や企画会社が提案するサンプルを選択し、発注するだけという事例も出てきている。
 小売業の発想では、商品調達の幅は広い方がいい。オリジナル商品といってもOEM生産で十分だ。セレクトショップ形態を採用するのであれば、OEM生産の必要すらない。必要な商品を必要なメーカーから仕入れればいい。
 小売店で最も大切なのは、立地、接客販売、仕入、広告宣伝等である。商品そのものよりもブランドイメージを重視する。その意味では、セレクトショップもSPA型アパレルも大差ないところまでいっている。小売店であれば、商品の企画・生産はアウトソーシングしても、商品仕入、販売は自社で行う。その発想に基づけば、中国市場でも直営店による店舗拡大を目指すのは当然だろう。
 中国のアパレルの多くは、欧米と同様に生産設備を持つメーカーである。メーカー発想を基本にしているので、業務の基本は商品を企画生産することだ。そして、小売店の機能である接客販売はエージェントに委託するという発想になる。
 中国アパレルの戦略は、直営店戦略と代理商戦略の複合であることが多い。代理商とはある地域の販売代理店を任せる制度で、欧米のレップに近い。中国アパレル企業は、代理商に申し込んだ人を厳密に審査し、代理商契約を結び、年間の仕入額やSKU(店頭に持つべき在庫)を設定し、商品とショップをパッケージで販売する。CHIC(中国服装服飾博覧会)等の展示会の目的は、ブランドの認知度アップと代理商の獲得である。中国の展示会では、商品を一枚ずつ販売するのではなく、ブランド単位のパッケージ販売が基本だ。したがって、展示会場で大型ショップを設営し、コンパニオンを揃え、代理商候補者の申し込みリストを用意し、コンサルティングを行う。メインストリートに陣取るアパレルは、一つのブースで2000~3000万円の費用をかけている。
 もし、日本アパレル企業が直営店戦略を採るのであれば、CHICへの出展ではなく、個々の百貨店に直接プレゼンテーションするべきだ。中国百貨店協会は、台湾アパレル10数社を集め、中国百貨店の経営者を集め商談会を行った。しかし、日本百貨店協会と中国百貨店協会の交流はあるものの、日本アパレル産業協会と中国百貨店協会は未だに接点がない。そして、CHICへの出展を継続しようとしている。
日本のアパレル企業の行っている中国市場戦略は、自らの営業戦略とのミスマッチが見られるのである。

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