冬の定番、「コンビニおでん」。昨今、各チェーンともお約束的に「70円均一」になっている。そのワケを日経新聞の関連記事をもとに深掘りして考察してみよう。
10月13日付日経本紙35面の小さなコラム「数字すうじ」にその話題が掲載されていた。タイトルは「70円――コンビニおでんセール、なぜか各社が横並び」。コンビニ各チェーンのコメントを掲載しているところに注目したい。<ある大手チェーンは「70円均一はセブンイレブンが先行し、対抗上、同じ価格になった」と説明。70円は「店名のセブンにちなんだのでは」とみる。別のチェーンは「利益がとれるぎりぎりの値段。7個買ってワンコインで済むわかりやすさもある」と明かす。一方、セブン―イレブン・ジャパンは「不動の一番人気の大根が75円なので、それを下回る価格設定とした」と「店名由来説」を否定>とある。
「コンビニのおでんは、なぜ70円均一なのか?」。上記記事では判ったような、判らないような状態なので考察を深めてみたいと思う。
そもそも、コンビニがおでんに注力するのはナゼか?
それは後でも引用するが、11月3日付日経MJ5面のコラム「光る技術 光る戦略」に記述されている。<おでんは一般的に利益率が高く、コンビニエンスストア各社にとって秋冬の主力商品の一つ>とある。
では、なぜ、利益率が高いのか?それは、「加工度」というキーワードで説明できる。
コンビニだけの話ではないが、一般的に「加工度を上げる=付加価値が増す」ことになるので、販売価格を高めることができる。魚を考えてみればいい。魚をそのままビニール袋に入れて売るよりも、切り身にしてパックした方がグラム単価は上がる。切り身ではなく、刺身にした方がさらに単価は上がる。刺身ではなく寿司になれば最も単価が高い状態になる。もちろん、その間にトレーや刺身のツマ、寿司のシャリなどの材料費や何より人件費がかかるが、利益=売上げ-コストなので、単価アップ分がコストを上回ればオイシイ商材となる。
コンビニ店頭で販売される商品は、ナショナルブランドかPB(プライベートブランド)の別はあっても完成品だ。利益=販売価格-卸値で決まっている。店頭でさらに収益を上げるなら、店員であるパート・アルバイトの人件費は既に決まっているので、店内で加工度を高めて収益を上げられる「店内調理品」を充実させることに走るわけだ。
収益率の高い店内調理品の中でも、最も単価アップが期待できるのが「おでん」であると思われる。ナゼなら、「コロッケ1つ」とか、「チキン1つ」というように、揚げ物系の店内調理品は基本的には単品注文だ。しかし、おでんで「はんぺん1枚」とか「大根1つ」とか単品で注文する人は、まずいない。
同一商品の買い増し・買い換えを促進することを「アップセリング」という。その意味で、おでんは店内調理品の優等生であるのだ。
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2012.12.01
2012.12.21
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。