ピンポイントなターゲット像に賭けるワールドのSC対策

2010.11.28

営業・マーケティング

ピンポイントなターゲット像に賭けるワールドのSC対策

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 単純化すれば、世の中には2種類の人間しかいない。「買ってくれる人」と、「買ってくれない人」。問題は、それが「誰」なのかを特定することが難しいことだ。それ故、「ターゲティング」に悩むのだ。

 11月24日付日経MJの連載コラム「戦略拠点明日を拓く」に極めて秀逸なターゲティングの例が掲載されていた。神奈川県相模原市にある、イトーヨーカドーのショッピングセンター「アリオ橋本」にワールドが展開する「スマーティー」。見出しに「セレクト感、40代女性に的」とある。しかし、ありがちな「40代女性がターゲット」などという漠然、かつ広範なターゲティングはしていない。そこがミソなのだ。
 記事には囲みでポイントが3つまとめられているので転載する。
 (1)セレクトショップなどで育った40代以上の女性を狙い、買い付け・雑貨を充実
 (2)30代の感性で50代半ばまでの体型に対応できるよう、大きめのサイズまで用意
 (3)ビートルズの公認グッズを扱い、週末などに訪れる男性客の需要も取り込む

 記事の内容を検証してみよう。商品(Product)は、「スマーティー」ブランドの商品は3割に抑え、ポイントの(1) にあるように、外部からの買い付けた服飾雑貨、クッションや自転車関連などの生活雑貨。衣類の品揃えはポイントの(2)にあるデザインとサイズの取りそろえである。また、接客も店の提供価値の一部、付随機能として充実させている。百貨店での接客経験のある年齢が高めの販売員を揃えている。また、(3)のビートルズの公認グッズが他に類を見ない品揃えの特徴だ。価格(Price)は、カットソーで2800円、雑貨で1900円とSCで買いやすい水準に設定しながら、高めの商品まで幅を持たせてあるという。

 では、ターゲットはどうか。「30代の感性で50代半ばまで」とあるから、いわゆる「アラフォー」が一番近い表現となるだろう。しかし、もっと具体的に設定している。「ファッションビルやセレクトショップ世代で、今は結婚して郊外に住む40代」とある。さらに、ビートルズの公認グッズが狙うのはサブターゲットである男性であるが、そこで利益を上げるのが主たる目的ではない。「奥さんが買い物をしている間に男性も楽しめる」という配慮であるという。つまり、「週末に夫婦で買い物にSCを訪れる夫婦」がターゲットなのだ。とかく夫は妻の買い物に付き合うことを面倒がる。そうした夫をDMU(Decision Making Unit=購買決定関与者)としてネガティブな行動から積極的に足を運ばせる戦略だ。

 上記を見ると、ターゲットである40代女性の姿が非常に具体的に見えてこないだろうか。若い頃の購買行動、現在の暮らしと購入する商品の価格帯や選択基準。さらには家庭内のDMUである夫との週末の行動と、その夫の心理まで。恐らく、「スマーティー」のターゲット設定には「ペルソナ」の手法が用いられている。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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